琉球大学、帯広畜産大学、高知大学は共同研究で、複数の種類の害虫を同時に防除・根絶するための、不妊化と「求愛のエラー」を組み合わせた新たな技術を提唱した。
不妊虫放飼とは、人為的に不妊化した害虫を大量に放すことで野生の害虫が正常に繁殖できないようにし、ターゲットの害虫を根絶させる技術だ。化学農薬を使用しない環境にやさしい害虫防除法として世界で広く利用されているが、根絶に必要な数(週に数千万~数億匹)を大量に増殖し継続的に放飼するための経済的・労力的なコストは大きい。また、気候変動や人・物の交易の増加で新たな害虫の侵入リスクが増加する中、すでにある害虫への対策を継続しつつ、新たな種類の害虫がターゲットの不妊虫放飼プログラムを開発し維持していくことは容易ではない。
そこで本研究では、本来1種類のみの害虫がターゲットとなる不妊虫放飼の枠組みに、「オスが他種のメスにも求愛して繁殖を妨害する」という繁殖干渉と呼ばれる行動を組み合わせて、複数の種類に同時に適用する新たな方法を考案した。繁殖干渉は、形や模様のよく似た近縁の種類どうしで生じる「求愛のエラー」であり、他種の増殖を抑えて種の絶滅を引き起こしたり、その分布を著しく制限したりする効果がある。繁殖干渉の効果が強い種類のオスを不妊化して野外に放せば、同じ種類のメスの繁殖を妨害するだけでなく、別の種類のメスにも求愛して繁殖を妨害させることができるので、近縁な複数の種類の害虫を同時に防除できると考えられ、まさに一石二鳥ならぬ「一石二虫」の防虫管理技術なのだ。
今後この技術が実用化されれば、低コストで効率のよい害虫の防除や根絶が可能となると期待される。