山口大学農学部では、最先端のバイオ研究の核となる技術である動物細胞への遺伝子導入と遺伝子発現を観察できる教材キット「昆虫細胞遺伝子導入・遺伝子発現観察キット」を開発、技術移転機構である有限会社山口ティー・エル・オーが全国の高等学校・中学校等への頒布を開始する。

 高等学校生物の教科書では、「細胞の構造」、「真核細胞と原核細胞」、「細胞小器官の構造」、「タンパク質の構造と機能」、「細胞分裂と核」といった「細胞」とその構成成分に関連した多くの内容が解説されている。しかし、これらの教育内容を、高等学校・中学校等の先進的な研究施設や実験装置が整備されていない教育現場において実験を通じて直接理解を深めることはこれまで困難であった。

 今回開発された教材キットは、科学技術振興機構(JST)が実施した「サイエンス・リーダーズ・キャンプ事業」による高大接続に資する取り組みが契機となり、同大学の内海俊彦教授らが、設備の不十分な教育現場の児童・生徒に、最先端の科学技術や実際の研究手法等を実体験させたいとの現場の声に応えて開発したものだ。

 今回の教材が提供する内容は、カイコ細胞の培養法や遺伝子導入によるタンパク質発現の可視化法、胞分裂時における核の挙動の可視化法だ。この教材によって、方法の原理と実際の手順を、高等学校にある既存の顕微鏡と安価な器具・材料を用いて短時間に効率よく学べるだけでなく、1つの教材で日本の先端技術に触れる機会を提供できるという。

 社会的にもバイオ分野には産業需要があり、担い手となる人材の育成が求められていることから、科学への理解を深め知的好奇心を喚起する本教材キットの普及・定着が期待される。

参考:【山口大学】先端バイオ研究の理解をめざした高校理科教材を開発「生きた細胞、細胞小器官、細胞内タンパク質の動きを見る」

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