住友生命保険相互会社は、第17回「未来を強くする子育てプロジェクト」表彰式を開催し、地域において子育て環境づくりに取り組む12組の団体と、人文・社会科学分野の研究活動の両立に努力している10名の女性研究者を表彰した。
住友生命は、2007年からより良い子育て環境の整備にむけた「未来を強くする子育てプロジェクト」に取り組んでいる。プロジェクトでは、地域において子育て環境づくりに取り組む個人・団体に贈る「子育て支援活動の表彰」と、子育てと人文・社会科学分野の研究活動の両立に努力している「女性研究者への支援」の2つを柱として、すこやかな子育てと夢のある未来づくりを応援している。
「女性研究者への支援」は、育児のため研究の継続が困難となっている女性研究者が研究環境や生活環境を維持・継続するために、「スミセイ女性研究者奨励賞」として1年間100万円を上限として助成金を2年間支給する。まだまだ社会的な支援が十分とはいえない人文・社会科学分野の女性研究者を支援の対象としていることがこのプロジェクトの特色となっている。
17回目となる今回は114名の応募があり、以下の女性研究者10名が「スミセイ女性研究者奨励賞」を受賞した。
<第17回「未来を強くする子育てプロジェクト」スミセイ女性研究者奨励賞>
筑波大学 人間系 特任助教 小川 緑氏
大阪大学大学院 人文学研究科言語文化学専攻 博士後期課程 荻田 朋子氏
東京藝術大学 未来創造継承センター 特任助教 酒井 絵美氏
東京大学大学院 総合文化研究科 多文化共生・統合人間学プログラム 言語情報科学専攻 博士後期課程 佐藤 理恵子氏
京都大学大学院 アジア・アフリカ地域研究研究科5年一貫制博士課程 髙村(井上) 満衣氏
埼玉大学 人文社会科学研究科 研究支援者 陳 海茵氏
東京学芸大学 教育学部 非常勤講師 中村 ひの氏
東京大学大学院 新領域創成科学研究科 特任研究員 御代田 有希氏
筑波大学大学院 人文社会科学研究科 日本学術振興会特別研究員(DC2) 村雲 和美氏
人間環境大学 心理学部犯罪心理学科 専任講師 山脇 望美氏
受賞者の一人、髙村満衣さんは、5歳と7か月の二人の子どもの子育てをしながらタンザニアで子どものライフコースについて研究している。受賞に際して「長男を妊娠してからというもの、自分の研究がなかなか思い通りに進まないのでそれがすごく歯がゆく感じ、何度も『研究をやめてしまおうかな』と思ったこともありました。タンザニアで、小学生の頃から追跡調査している子どもたちは、もう二十歳前後になります。親になった子もいます。私自身が子どもを連れていくことで、彼、彼女ら、そして家の人ともより深い交流ができ、いろんな語りを聞くことができ、調査に厚みを持たせることができるのではないかと期待しております。またこのような経験が、子育てをしながらフィールドワークをしている女性研究者のロールモデルになれるように努め、研究に邁進してまいります。」とコメントを寄せている。
選考委員を務めた恵泉女学園大学の大日向雅美学長は、「スミセイ女性研究者奨励賞は研究姿勢・研究内容と生活の困窮度から選考させていただいておりますが、今年は従来に増して研究姿勢に卓越した傾向がみられました。昨今、女性活躍推進が言われていますが、人文社会科学領域の研究を続けていく困難度は、依然として変わっていません。しかし、それを言い訳にせず、乗り越えていくバイタリティを持った研究者がたくさんいらっしゃいました。女性が社会的に力をつけてきた背景には、結婚や子育てによって自分の生き方やキャリアを捨てないという女性たちの意識の変化があることが考えられます。しかも、それを貫くことが容易ではないなかで、信じる道を諦めることなく、しなやかに強靱に生き抜こうとしている女性研究者の皆さまの姿に、明るい一条の光を見る思いでした。」と講評している。