京都府立医科大学とハウス食品グループ本社株式会社の研究で、慢性腎臓病患者において高濃度塩味を忌避する反応が低下していることがわかった。

 塩分摂取は血圧を上昇させ、糖尿病、高血圧、慢性腎不全などの生活習慣病を招くことから、血圧を適切にコントロールするために塩分摂取制限は重要である。

 一方、塩分制限の前提には『ヒトは塩分を好む』という観点があるが、海水を好んで飲まないことからも、高濃度塩味に対してヒトは忌避性を持つと考えられる。そこで本研究では、種々の濃度の塩味に対して、その味が「好き」から「嫌い」に変化する閾値を調べることで、高濃度塩味に対する忌避反応を定量的に評価する簡便な研究手法を確立した。

 はじめに、この手法を用いて健常者を対象に味覚試験を行ったところ、塩味濃度を上昇させるほど忌避反応を示す被験者が増加した。しかし、約37.6%の被験者は、最高塩味濃度(20%)でも忌避反応を示さなかった。

 次に、慢性腎臓病患者を対象に同様の味覚試験を行ったところ、健常者よりも塩味を認識できる最低濃度が上昇しており、塩味を感じにくくなっていることがわかった。加えて、約80%の人が20%の塩味濃度にも忌避反応を示さなかったことから、高濃度塩味に対する忌避性が減弱していることが示された。すなわち、慢性腎臓病患者では、塩味を正確に認識できないだけでなく、塩辛い食べ物を避ける機能が低下しており、無意識・無自覚のうちに塩辛い食べ物を摂取している可能性が考えられる。

 本研究は、自分では『薄味』と感じていても、実際には塩分濃度が高い可能性があり、自身の味覚での塩分制限が不確実であることを示唆した。反対に、塩味忌避反応を増強させることができれば、より効率的に無理なく減塩行動が実行できると考えられる。

 今後は、塩味忌避反応を減弱させる因子の特定や、より低い濃度で忌避反応を誘導する方法の開発に取り組むとしている。

論文情報:【Kidney International Reports】Aversion to a High Salt Taste is Disturbed in Patients With CKD

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