名古屋大学大学院の研究グループは、北海道大学大学院、京都大学大学院との共同研究により、メダカを用いて卵の極性(不均一性)が作り出される仕組みを分子レベルで明らかにし、生殖細胞は性が決まる前から卵になる準備をしていることが分かった。

 卵から身体が形作られる過程では、細胞が前後、左右、上下の軸(体軸)に沿って秩序よく配置される必要がある。魚類や両生類では、前後軸は卵の極性(不均一性)に由来するもので、この極性は精子にはない性質だ。一方、メダカはY染色体の有無(XX/XY)で性が決まる動物で、Yが働いてオスとなるのは受精後4日目から。卵・精子は共通の前駆細胞(生殖細胞)から作られるが、性が決まる前に生殖細胞は卵と精子のどちらにもなれる。

 研究グループは、生殖細胞が卵と精子に運命付けられるタイミングで、微小管という分子の動態が大きく変化していることを見つけた。微小管を染色すると、生殖細胞内にドーム状の形をした中空の微小管構造(微小管ドーム)が存在することが分かった。この微小管ドームは、生殖細胞が卵に分化する際には安定して維持されるが、精子に分化する際に消失した。さらに微小管ドームは、卵の極性を作り出すのに必要なバルビアーニボディという細胞内構造の基盤となっていた。

 卵特有の基盤である微小管ドームは、メス(卵)やオス(精子)に決まる前の生殖細胞にすでに存在していた。この結果は、生殖細胞の性の初期設定はメス型であり、メスもオスも最初は卵を作るための準備をしているという興味深い事象を示唆している。同時に、微小管ドームが卵の極性を作り出すプロセスを発生初期にさかのぼって初めて示すことができたとしている。

論文情報:【Development】Sexually dimorphic dynamics of the microtubule network in medaka (Oryzias latipes) germ cells

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