先天性心疾患を持つ新生児や幼児の外科治療で新たな選択肢となる心・血管修復パッチの「シンフォリウム」が、繊維・ファッションビジネス業界の専門紙、繊研新聞の第54回繊研合繊賞で準グランプリに選出された。大阪医科薬科大学と福井県福井市の福井経編興業、帝人が共同開発した。

 繊研合繊賞は化合繊業界の発展を期待し、優れた素材や技術開発、マーケティング活動を表彰している。2023年度の授賞式は3月、東京都中央区のロイヤルパークホテルで開かれた。「シンフォリウム」は1票差でグランプリを逃したが、テキスタイル産地の技術力の高さと可能性を示すものとして満場一致で準グランプリを獲得した。

 シンフォリウムは大阪医科薬科大学医学部の根本慎太郎教授が、自分の組織に置き換わることで患者の成長によるサイズ増大に対応できるパッチのアイデアを生み、福井経編興業が持つ伝統的な繊維産業の高度な経編技術で特別な編み地構造に細胞を取り込んで、伸長可能な心・血管修復パッチを開発した。

 共同研究には医薬品や医療機器の製造・開発をする帝人も製品化設計や薬事申請を担って参画、2014年から進めた結果、2023年に厚生労働省から製造販売の承認を得て、2024年3月1日付けで保険適用となった。

 先天性心疾患はパッチ状の医療材料で狭窄部や欠損部の血液循環を正常化する手術が行われるが、患者が新生児や幼少期に実施することが多く、子どもたちの成長でパッチが異物反応を受けて劣化したり、患者の肉体の成長によって手術部に狭窄が発生したりする問題が起きている。

 大阪医科薬科大学は2021年、大阪医科大学と大阪薬科大学が統合し、医学部・薬学部・看護学部を有する医療系総合大学となっている。

参考:【福井経編興業】「シンフォリウム」が第54回繊研合繊賞 準グランプリに選出されました
【大阪医科薬科大学】心・血管修復パッチ「シンフォリウム」の保険適用について

大学ジャーナルオンライン編集部

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