東京大学大学院医学系研究科小児科学の加藤元博教授と埼玉県立小児医療センター血液・腫瘍科の康勝好科長らおよび日本小児がん研究グループ(JCCG)らは、小児の急性リンパ性白血病に対する臨床試験で世界最高水準の治療成績を達成し、全国多数の施設で実施可能な「標準治療」を確立することに成功した。
小児が罹患するがんのうち急性リンパ性白血病は最多の疾患であり、その約80%を「B前駆細胞性急性リンパ性白血病(B-ALL)」が占める。日本では年間に約400人の子どもが罹患することで知られる。
本研究グループは、この疾患に対し、これまでの国内外の臨床試験の結果を参考にして治療骨格の改良を検討した。再発リスクに応じて全体を標準リスク群、中間リスク群、高リスク群の3つに分け、層別化治療のリスク分類を再構成した上で、薬剤の使用量調整や放射線照射、造血細胞移植の適応を厳選するなどしてそれぞれの治療強度を最適化した。
この層別化治療法を用いて、全国144の小児白血病治療施設の協力を得て、全国の1800名以上の患者が臨床試験に参画した。オールジャパンの体制による大規模な多施設共同臨床試験の結果、98.9%のB-ALL患者が寛解を達成した。さらに、5年全生存率94.3%、5年無イベント生存率(寛解後の再発、合併症死亡などが生じず生存している割合)85.2%と極めて良好な治療成績を達成した。
国内最大規模の臨床試験を通じ、合併症リスクを抑えながら高い生存率を達成できることを示したとともに、診断と診療の標準化により、全国多数の施設で実施可能な「標準治療」を確立できたという。現在は、この標準治療を基にさらなる改善を目指した継続的な臨床試験が行われている。本研究成果は、小児の急性リンパ性白血病の病態解明や新たな治療開発につながることも期待される。