アメリカザリガニが、複数の都府県のレッドデータブックにおいて絶滅危惧種等に選定されているニホンアカガエルの卵・幼生を非常によく捕食することがわかった。岡山大学の研究グループが明らかにした。
アメリカザリガニは雑食性であり、動物・植物ともに餌とするため、本種が侵入して定着・増殖すると、在来生物に対して深刻な悪影響を与えることが知られている。カエル類をはじめとする両生類でも、同様にアメリカザリガニの侵入・定着後に個体数が減少したり、地域絶滅したりする例が確認されているが、そのメカニズムの詳細は不明だった。
そこで本研究グループは、ニホンアカガエルを用いて、その卵や幼生とアメリカザリガニを同じ水槽に24時間同居させる室内実験を実施した。その結果、アメリカザリガニによるニホンアカガエルの卵・幼生に対する強い捕食圧が確認された。
ザリガニと卵を同居させる実験では、88.9%の卵が捕食され、ザリガニと幼生を同居させる実験では、86.7%の幼生が捕食された。幼生の隠れ家として水草を入れた場合の実験においても、幼生が水草を隠れ家として利用する行動が認められたにも関わらず、77.8%がアメリカザリガニに捕食された。
一方、アメリカザリガニの体サイズの違いによる捕食圧を比較したところ、小型サイズのアメリカザリガニに対してのみ、隠れ家(水草)の存在が幼生の生存率を有意に増加させる効果が認められた。しかし、中型・大型サイズのザリガニでは、隠れ家があっても生存率が統計的に有意に異なることはなく、容易に幼生を見つけ出して捕食してしまうことが確認された。
以上の結果から、在来カエル種にとって、アメリカザリガニによる卵や幼生の捕食が脅威となることが示された。希少カエル類の保全において、アメリカザリガニの侵入防止や迅速な駆除対策が急務であるとしている。
論文情報:【Journal of Crustacean Biology】Predation on eggs and larvae of the Japanese brown frog Rana japonica Boulenger, 1879 by the invasive crayfish Procambarus clarkii (Girard, 1852) (Decapoda: Astacidea: Cambaridae) under laboratory conditions