筑波大学生命環境系の恩田裕一教授、京都大学大学院総合生存学館の館山敷亮教授、福島県の研究グループが、東京電力福島第一原子力発電所事故後に福島県の阿武隈川水系で河川内の放射性セシウム濃度を追跡調査したところ、人間活動の影響を受ける流域で濃度が大きく低下していることが分かった。
筑波大学、京都大学によると、研究グループは阿武隈川水系30カ所で長期モニタリングしたデータを分析した。その結果、事故後1年間でセシウム濃度が急速に低下し、その後緩やかな減少を続けていることを突き止めた。
事故後5年目までに旧ソ連チェルノブイリ原発事故後のプリチャピ川に比べ、セシウム濃度が3分の1から21分の1に低下しており、欧州で得られた知見より速いペースで環境浄化が進んでいることになる。
初期の放射性セシウムの主な発生源が阿武隈川流域の38%を占める水田、耕作地、市街地で、ここから全放出量の85%に当たるセシウムが流出していることも明らかになった。濃度低下が顕著だった流域は水田や市街地など人間活動の影響が大きい土地利用形態が多いことから、研究グループは人間活動が浄化を促進しているとみている。事故から3年目以降は除染の影響が確認された地点もあった。
今回の研究成果は将来起こりうる放射能汚染事故からの復興計画策定に役立つとみられている。
参考:【筑波大学、京都大学】人間の活動が河川の環境修復を促進する ~福島原発事故後の河川放射性物質長期モニタリング結果から~