京都大学の高橋千太郎特任教授らのグループは、高レベル放射性廃棄物から取り出した貴金属のパラジウムに微量混入する可能性のある放射性パラジウムについて、放射線管理区域から持ち出して通常の生活環境で使用しても安全といえるクリアランスレベルを、世界で初めて試算し発表した。

 高レベル放射性廃棄物にはパラジウムやジルコニウムなどの有用な元素が含まれている。特に白金族元素のパラジウムは自動車排ガス触媒などに使用される貴金属で、これを回収して再利用できれば資源の少ない日本には朗報だ。しかし、問題は回収した中に微量の放射性パラジウムが残留すること。そこで、残留した放射性パラジウムの濃度がどれくらいまでなら人体への影響は起こらず、放射線管理区域から持ち出して一般の生活環境で使用しても問題ないかという基準(クリアランスレベル)を明らかにしておく必要がある。

 今回の研究では、パラジウムの原料から製品への流れ、利用形態、廃棄の状況などについて詳細に調査し、人体がパラジウムを取り込む経路と量を推定して各放射線被ばく線量を評価。それに基づいて試算した結果、放射性パラジウムのクリアランスレベルは1グラムあたり約3000ベクレルとなった。この試算値は、原子炉施設から出てくる廃材中の放射性コバルトや放射性セシウムなどの放射性核種に対するクリアランスレベルに比べてかなり高いが、放射性パラジウムは化学的に安定した個体で、放出するベータ線は非常に弱いため、この濃度での人体や環境への影響はないという。

 今後は、今回の研究に関する検証を行い、同様に再利用価値のあるジルコニウムなどのクリアランスレベルも検討するとしている。

論文情報:【Journal of Nuclear Science and Technology】Estimation of the radiation dose of 107Pd in palladium products and preliminary proposal of appropriate clearance level

京都大学

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