九州工業大学の坂本順司教授らは、大腸菌で働く「シトクロムbd型呼吸酵素」の精密立体構造を解明した。

 「呼吸酵素」は、動物や微生物の細胞に存在し、食物の栄養分から生命活動に必要なエネルギーを抽出するはたらきをする。呼吸で取り入れた酸素によって糖質や脂質を酸化し、エネルギーを獲得している。ヒトや動物がもつ「ヘム銅型」と微生物に特有な「シトクロムbd型」が存在し、ヘム銅型の研究は古くから進んでいる一方、bd型の研究は中途だ。

 坂本教授らは以前に、好熱菌を対象とした研究で、世界で初めてbd型呼吸酵素の精密立体構造を解明した。そして今回、大腸菌のbd型呼吸酵素を対象とした研究を行い、近年進歩の著しい低温電子顕微鏡法(クライオ電顕)を用いて、2つ目の精密立体構造を明らかにすることに成功した。

 同じbd型に分類されるが、好熱菌の呼吸酵素と大腸菌の呼吸酵素では、事前の予想をはるかに超える違いがあった。ヘムbとヘムdの配置が逆転している、酵素分子内の酸素の通り道が異なる場所にあるなどの構造の違いに加え、好熱菌の酵素が「酸素毒性」の解毒を主な機能とする一方、大腸菌の酵素はエネルギー獲得を主に果たすことがわかり、bd型呼吸酵素の多様性が明らかとなった。

 好熱菌は「グラム陽性菌」、大腸菌は「グラム陰性菌」に分類される。本成果により、学術的に重要な2大群の微生物で呼吸酵素の立体構造が出揃い、多様性の幅が具体的に明らかになったと言える。

 bd型呼吸酵素は、結核菌やジフテリア菌といった病原菌を含む多くの微生物の生存や増殖に関わっている。本研究で明らかになった構造情報に基づいて、病原菌の bd型呼吸酵素を阻害するがヒトのヘム銅型呼吸酵素を阻害しない薬を設計すれば、新しい抗菌薬が開発できるものと期待される。

論文情報:【Science】Active site rearrangement and structural divergence in prokaryotic respiratory oxidases

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大学ジャーナルオンライン編集部

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