北海道大学の木村真明准教授と香川高等専門学校の谷口億宇講師の研究グループは、元素の起源となる分子共鳴の存在を予言した。宇宙に存在する物質の起源解明が期待される。

 超新星爆発の際に起こる炭素と酸素の核融合反応が、元素の起源に重要な役割を果たすことは以前から予想されてきた。しかし、地上の加速器で超新星爆発と同じ環境を再現し、実験を行うことは極めて難しいため、理論研究による検証が待たれていた。

 2つの原子間の様々な力がバランスし、原子核が結合した分子状の準安定状態を分子共鳴と呼ぶ。今回、原子核を構成する陽子と中性子の運動を波束で記述する「反対称化分子動力学模型」を用いて、分子共鳴の性質を調べた。炭素原子核は鏡餅のような扁平な形状で、分子共鳴を形成する際に様々な方向を向くことができる。この「回転効果」を記述するため、方向の異なった炭素原子核の波動関数を重ね合わせ、分子共鳴のエネルギーとその発現メカニズムを明らかにした。

 具体的には、ケイ素原子核の構造をスーパーコンピューターによる数値シミュレーションで調べたところ、炭素と酸素の原子核同士が弱く結合した分子共鳴が、従来の観測よりもずっと低い極低エネルギーに存在する可能性を指摘した。この分子共鳴の存在により超新星爆発の際に炭素と酸素の核融合反応が爆発的に生じ、マグネシウムやケイ素の原子核が大量に作られる可能性がある。

論文情報:【Physics Letters】12C+16O molecular resonances at deep sub-barrier energy

大学ジャーナルオンライン編集部

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