大阪大学と北海道大学の共同研究グループは、溶液に溶けているはずの塩が局所的に析出と溶解を繰り返す現象を特殊な電子顕微鏡により直接観測することに成功。さらに、この現象がアルツハイマー病の原因とされるタンパク質凝集体の生成を加速する様子を世界で初めて直接観察することにも成功した。

 飽和溶液中の溶質の濃度は溶解度と呼ばれる。水に塩を溶かしても、この濃度以下なら塩は析出しない。今回の実験では、溶解度の50分の1程度の濃度の塩の溶液を用い、液体を直接観察できる特殊な透過型電子顕微鏡により、溶液内のナノサイズの領域を観察した。すると、時折、溶けているはずの塩が析出して成長し、短時間の内に収縮して再び溶解する現象を発見した。局所的な濃度の変動(ゆらぎ)により、高濃度領域に塩が析出すると周りの濃度が低下して再び収縮する現象だ。

 研究グループはこの現象が、タンパク質の凝集を加速することも発見した。アルツハイマー病の原因タンパク質「アミロイドβ」が塩とともに溶解しているとき、塩が一時的に析出し成長すると、その表面に多くのタンパク質分子が吸着する。その後、その塩が再び溶ける時、吸着したタンパク質分子が塩の消滅点に集められて局所濃縮され、その結果タンパク質の凝集核(毒性凝集体)を形成することが分かった。

 神経変性疾患にかかわるタンパク質には、アミロイドβと同様に疎水性の部位が存在する。今回、新たに明らかとなった凝集メカニズムは、神経変性疾患の発症に共通した現象と考えられるという。アルツハイマー病の発症メカニズムの解明に加え、神経変性疾患の予防・治療への貢献が期待される。

論文情報:【The Journal of Physical Chemistry Letters】Time-Resolved Observation of Evolution of Amyloid-β Oligomer with Temporary Salt Crystals

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