背骨が曲がる疾患である側彎症は、その多くが原因の特定できない特発性側彎症です。特発性側彎症の中でも最も発症頻度が高いのが思春期に起きる思春期特発性側彎症(AIS)で、日本人では約2%にみられる非常に発生頻度の高い疾患です。理化学研究所統合生命医科学研究センターの池川志郎チームリーダー、慶応義塾大学医学部の松本守雄教授らによる共同研究グループは、AISの発症に関連する新たな遺伝子「BNC2」を発見したと発表しました。

 AISの発症には遺伝的要因が関与すると考えられており、世界中で原因遺伝子の探索が行われてきました。今回、同グループは、日本人のAIS患者と非患者合わせて約1万8000人を対象とした遺伝子解析により、BNC2遺伝子がAIS発症に関わっていることを発見しました。さらに、モデル生物であるゼブラフィッシュでBNC2を過剰発現させたところ、約65%に側彎症が発症しました。BNC2は脊髄、骨、軟骨で多く発現していたことから、BNC2の異常が、脊髄、骨、軟骨などの形成の障害を通じてAIS発症に関与すると考えられます。

 今回、新たなAIS感受性遺伝子が発見されたことで、AISの原因や病態の解明が飛躍的に進展すると見込まれています。さらに今後、BNC2の機能解析やAIS発症に関わる新たな経路を詳しく調べることで、新しいタイプのAIS治療薬の開発につながることが期待されます。
 本研究は、京都大学、広島大学、中国・南京大学との共同研究として行われ、成果は米科学誌アメリカン・ジャーナル・オブ・ヒューマン・ジェネティクス電子版に掲載されました。

出典:【慶應義塾大学】思春期特発性側彎症(AIS)発症に関連する遺伝子「BNC2」を発見-AISの発症機構の解明、新たな治療法の開発へのブレークスルーに-

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