順天堂大学の池田志斈教授と東海大学の岡晃講師らの共同研究グループは、円形脱毛症の原因遺伝子の1つとしてCCHCR1を世界で初めて同定。この遺伝子のリスクアリル導入マウスで、円形脱毛症の類似症状の再現に成功した。
円形脱毛症は若い女性に発症頻度が高く、特に全頭型や汎発性症例では外見の変化により患者のQOL(生活の質)が著しく低下する。発症機序として自己免疫説が挙げられ、多くの遺伝子や要因が関連する多因子性疾患であるともされているが、原因や仕組みは不明。世界中で円形脱毛症に関する原因遺伝子の解明が試みられてきたが、同定はされていない。
今回研究グループは、円形脱毛症の患者と健常者の末梢血からゲノムDNAを抽出して解析し、どのゲノム部位に疾患に関わる遺伝子が存在するかを統計学的に推定。その結果、HLA-Cという遺伝子の近くに原因遺伝子が存在することをつきとめた。次に、患者の染色体のHLAゲノム領域について健常者の塩基配列と比較。CCHCR1という遺伝子にアミノ酸置換が生じており、これが円形脱毛症の発症に関与するリスクアリル(発症リスクを高める対立遺伝子)だと判明した。
そこでゲノム編集法を用いて、このCCHCR1遺伝子のリスクアリルを導入したゲノム編集マウスを作成すると、ヒトの円形脱毛症患者に類似する脱毛がマウスに生じた 。さらに、リスクアリルのある円形脱毛症患者の遺伝子発現パターンと毛幹の状態は、ゲノム編集マウスとよく似ていることが分かった。
今回の研究成果により、CCHCR1遺伝子のリスクアリルを持つ症例と持たない症例との違いを明らかにすることで、円形脱毛症のタイプ別診断法と各タイプに特化した治療法の開発が可能になるとしている。