神戸大学大学院農学研究科の杉浦真治准教授は、水田などに生息するマメガムシ(甲虫の一種)は、カエルに捕食されても消化管を生きて通過して、総排出腔(お尻の穴)から無事に脱出することを発見した。

 近年、捕食者からの攻撃後、捕食者体内から生きて脱出する行動が発見されている。このような行動には、口から吐き出されて脱出する場合と、消化管を通って肛門や総排出腔から生きて排出される場合とがある。特に後者は、排出されるまで消化管内で長時間耐える必要がある。そのため、できるだけ短時間で積極的に脱出するような行動が有利だが、そのような行動は知られていなかった。

 カエル類の多くは歯がなく、獲物となる昆虫や小動物を丸呑みする。実験室下で様々な陸生・水生昆虫をカエル類に与えて逃避・防衛行動を調査した結果、マメガムシは15個体中14個体(90%以上)が、トノサマガエルに飲み込まれても、カエルの総排出腔から生きて脱出し、1個体が死んで排出された。その他のカエル4種(トウキョウダルマガエル、ツチガエル、ヌマガエル、ニホンアマガエル)に対しても同様の行動が見られた。

 また、トノサマガエルが未消化物を排出する時間は、マメガムシ以外の餌では24~148時間で平均50時間、マメガムシの場合(生きて排出)は0.1~3.5時間で平均1.6時間だった。カエル類の総排出腔は、平常は括約筋で閉じられてマメガムシの力だけでは脱出できない。そのため、カエルを内部から刺激して排便を促している可能性がある。このような捕食者の排便を促進して総排出腔から生きて脱出する動物はこれまで知られていなかった。

論文情報:【Current Biology】Active escape of prey from predator vent via the digestive tract

大学ジャーナルオンライン編集部

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