技術的推論とは、道具や対象物の物理的な特徴からその使用方法を推論することをいい、技術的推論の程度は、その道具や対象物の機能的な部分をどれだけ見るか(累積注視時間)によって定量化することができる。

 道具を使用する場面においては、技術推論作業が重要であることが報告されているが、これまで、「その道具を使用する意図の有無」による視線探索の違いは明らかになっていなかった。今回、畿央大学大学院修了生(現:医療法人社団仁生会甲南病院)の玉木義規氏と森岡周教授らは、健常成人14名に実験に参加してもらい、被験者に馴染みのある道具とない道具を提示して、「自由観察した時」、「持ち上げを意図した時」、「使用を意図した時」の3つの条件下における視線探索の違いを調べた。

 その結果、持ち上げることを意図した時に比べて、使用を意図した時は累積注視時間が長くなり、使用意図を持たずに道具を自由観察した時にも、同様に道具の機能部分へ視線が偏向して累積注視時間が長くなることがわかった。つまり、単に道具を見た時にも、道具使用のための技術推論作業が自動的に出現しうることが示唆された。一方で、自由観察時の技術的推論は使用意図時ほど強くはなかったといい、自由観察時と使用意図時における技術的推論の違いは、自動的な技術的推論と意図的な技術的推論の違いを示している可能性も示唆された。

 また、馴染みのない道具においては、自由観察時と比較して持ち上げ意図時では累積注視時間が有意に減少し、使用意図時では累積注視時間が有意に増加した。このように、本研究から、馴染みの度合いの異なる道具観察において、使用意図時と自由観察時の視線探索の比較によって技術推論の程度が判別できる可能性が示された。本研究者らは今後、道具使用障害を呈する患者に対しても同様の実験を実施し、道具使用障害の病態メカニズムの解明につなげることが重要だとしている。

論文情報:【Frontiers in Psychology】Effects of tool novelty and action demands on gaze searching during tool observation

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