東京学芸大学と東京大学、北海道中川町の中川町エコミュージアムセンターは同町の天塩川の支流に位置する地層から、すでに絶滅したオルサコドント科のスフェノダス属のサメの歯化石を多数発見したと発表した。完全な形では世界で二例目の報告であり、環太平洋地域からは初めてという。
北海道北部に位置する中川町は、世界的に有名な化石の産出地で、これまでもアンモナイトやサメ、恐竜など様々な化石が発掘されている。今回の発掘場所は、天塩川支流安平志内川の中生代白亜紀後期(約8900万年前)の地層だ。
今回の発掘標本の中には、細長い歯冠と幅の広い歯根がどちらもほぼ完全に保存されており、現生のサメ類の歯と比較しても類を見ない、特徴的な逆T字型の化石も含まれている。この逆T字型のサメの歯化石は、その特徴的な歯冠と歯根から、オルサコドント科のスフェノダス属であることが明らかになった。オルサコドント科は原始的なサメの仲間で、すでに絶滅している。スフェノダス属の歯はその特徴的な形ゆえに壊れやすく、白亜紀の地層から発見されたスフェノダスの化石の中で、完全に保存されている標本は世界中で一例しか報告がなかったという。
これまで不完全な化石では難しかった詳細な比較がこの標本によって可能となり、白亜紀の海に生息した生物の多様性と分類の研究に非常に重要だ。中川町ではこのスフェノダスをはじめとして、白亜紀の生物の化石が続々と発見されており、研究チームとしてはこれからも同町エコミュージアムセンターを基点として継続的に発掘調査を行っていきたいとしている。