理化学研究所と北海道大学、神戸大学、松江工業高等専門学校、九州大学、京都大学の共同研究グループが理研のスーパーコンピュータ「京」を使った超高解像度シミュレーションで、火星大気中の塵旋風(塵の悪魔=ダストデビル)を大量に再現することに成功した。
塵旋風は地表付近で砂や塵を巻き上げながら渦巻き状に立ち上がる突風で、地球では晴天時に砂漠や校庭など乾燥した土の上で見られる、いわゆる「つむじ風」。火星では塵旋風が頻発し、大きな砂嵐へつながることもあり、しばしば火星全体を覆うほどの巨大な砂嵐として観測される。 火星では大気中の塵が気候変動に影響を与えることが分かっており、塵旋風によって塵が地表から大気中に巻き上げられることが要因の一つとして考えられていたが、火星観測だけではそれ以上の情報を得ることが難しかった。また、計算機で大気シミュレーションを進めるには、塵旋風の渦とそれを生み出す大気運動の規模に大きな差があり、同時計算するにはばく大な計算能力が必要で、従来のコンピューターでは性能が足りなかった。
北海道大学によると、研究グループは理研が開発した大気シミュレーションの数値モデルに火星大気の設定を組み込み、約200時間かけてシミュレーションを進めた。その結果、最も対流活動が活発になる時間帯に3,000個を超える塵旋風を発生させることに成功した。
得られたサンプルを解析すると、塵旋風の大きさは水平半径数メートルから数百メートル、最大風速も分速1メートルから数十メートルまでさまざまなものが存在することが分かった。
今後、さらに研究を進め、塵旋風が発生する季節や場所の違いを明らかにすることで、火星天気予報の実現や火星探査計画への貢献が期待できるとしている。