東京工業大学の青木尊之教授を研究代表者とする東京工業大学・九州大学・慶應義塾大学の共同研究チームは、スパコンを使い、フォークボールの落ちる理由が「負のマグヌス効果」であることを初めて解明した。

 ボールは進行方向に対してバックスピンで回転すると、通常は浮き上がる力(揚力)を受けるが、この原理を「マグヌス効果」という。しかし、フォークボールはバックスピンで回転するが、ほとんど浮き上がらず放物線に近い軌道を取る。その理由は謎のままであった。そこで、研究チームは東京工業大学学術国際情報センターのスパコンTSUBAME3.0を用いて、野球ボールを縫い目の回転まで詳細に計算する数値流体シミュレーションを実施した。

 その結果、ツーシーム(1回転中に縫い目が2本しか見えない)回転のボールでは、縫い目のある範囲の角度において下向きの力「負のマグヌス効果」が発生し、低速回転のツーシームであるフォークボールを落下させる大きな要因となることが分かった。さらに投手がボールをリリースした直後の球速・回転速度・回転軸が分かれば、その後のボールの軌道を精度よく再現できることも分かった。時速151kmで1分間に1,100回転するツーシームとフォーシーム(1回転中に縫い目が4本見える回転のボール)を比較すると、同じ球速・回転数であっても縫い目の違いだけで打者の手元での落差が19cmも違うことが明らかになった。

 今回のようなスパコンによる空力解析は、野球ボール以外にも、無回転のサッカーボールやバレーボールの軌道の変化や、空力が強く影響するウィンター・スポーツなどで戦術に活用可能であり、数値シミュレーションはさまざまな産業応用も期待できるとしている。

参考:【東京工業大学】フォークボールの落ちる謎をスパコンで解明(PDF)

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