順天堂大学大学院の井本成昭非常勤助教らの研究グループは、日本人の乳児における腸内ビフィズス菌の占有率に、分娩時の抗菌薬の投与や「年上のきょうだいの有無」が大きく関与することを明らかにした。アサヒクオリティーアンドイノベーションズ株式会社コアテクノロジー研究所、岩手県立磐井病院との共同研究によるもの。
ヒトの腸管内には100~1000兆個もの細菌が定着している。乳児の生後6カ月間における腸内細菌の菌種の割合(占有率)や定着が、将来的なアレルギーなどの疾患の発症に影響するとされる。特に、アレルギー性疾患に関与しているとされるビフィズス菌の占有率や定着に何が影響するのか詳細は不明だ。また、感染予防のための分娩時の抗菌薬投与が乳児の腸内細菌叢に与える影響の報告もほとんどない。
研究グループは13ヶ月間(2018年2月~2019年3月)、磐井病院で出産した142名の母親とその乳児を対象とした研究を実施。その結果、腸内ビフィズス菌の占有率は、分娩直前に母体へ抗菌薬を投与した群では低いが成長に伴ってその割合が回復すること、また、年上のきょうだいの存在により高くなることが判明した。きょうだい間で腸内細菌が相互干渉している可能性があるという。さらに、ビフィズス菌に次いで主要な腸内細菌の一つであるバクテロイデス菌の占有率は帝王切開群で低く経膣分娩群では高いことを示した。
帝王切開での分娩は必ず抗菌薬が投与されるため、バクテロイデス菌の占有率に影響するのが抗菌薬の種類の違いか分娩様式の違いかはさらに研究が必要という。今回の研究結果が乳児のその後の健康面にどのような臨床的意義があるのかを今後明らかにしたいとしている。