京都大学の研究で、ヒト特有の「相手にリズムを合わせる能力」が生後18ヶ月ごろから漸次的に出現してくることが明らかになった。
ヒトだけでなく、動物は集団内の個体にリズムを合わせる行動を示すが、ヒト以外の動物が示すリズム同期行動が不安定、不確実かつ長続きしない一方で、ヒトは他個体へのリズム同期をきわめて迅速・正確かつ持続的に行うことができる。こうしたヒト特有の能力が、いつごろ、どのように発達してくるのかを検証するため、本研究では、生後18ヶ月、30ヶ月、42ヶ月の乳幼児に「相手(母親・ロボット)と太鼓を叩く」場面を提示して、相手のリズムに同期する能力を調べた。
その結果、生後18ヶ月の段階ですでに、相手の「早いリズム」に応じて自らの叩きを制御する行動がみられ、一部では、母親が相手である場合に限り、「ゆっくりとしたリズム」でも合わせようとする行動が確認された。生後30ヶ月以降では、相手のリズムに柔軟かつ正確に合わせるようになった。
このことから、自分が行いやすい(発達早期の運動機能で対応できる)リズムであれば、早期から相手への同期がみられ、またその行動は社会的な絆によって促進されること、生後30ヶ月になると相手のリズムに柔軟かつ正確に合わせる能力が顕著に出現するようになることが示された。
本研究により、相手のリズムに同期する能力が、生後18ヶ月から30ヶ月にみられる社会性の発達と密接に関連しながら漸次的に出現してくることが明らかになった。相手にリズムを合わせて行動する能力は、複雑な社会集団を築きながら進化してきたヒトにとって、生存にかかわる重要な意味をも持つと考えられる。今後は、生後18ヶ月以前の乳児の同期行動の萌芽も、本グループの研究対象となるという。