近年、日内で慢性疼痛の強度が変動する「疼痛律動性」の存在が報告されている。
このような慢性疼痛の日内変動を把握することは、慢性疼痛への治療戦略を考えるうえで有用と考えられるため、これまで、様々な疾患で疼痛律動性の調査が行われてきたが、疼痛律動性を考慮した治療介入に関しては報告がなかった。
そこで、畿央大学大学院博士後期課程の田中陽一氏と森岡周教授らは、慢性疼痛を有する1症例を対象に、疼痛律動性と日中の身体活動量との関係に基づいた患者教育介入を実施し、疼痛律動性を考慮することによる具体的な効果を検討した。その結果、介入後の疼痛律動性、身体活動量に良好な変化が認められた。
症例は、約8年前から神経障害性疼痛を呈している60歳代の男性である。初期評価では、軽強度活動(light-intensity physical activity:LIPA)が日中の疼痛強度に影響を与えている可能性が示唆されたため、患者教育では、午後に悪化しがちな痛みを午後のLIPAを維持することで軽減する方法を中心に説明し、日常生活活動の重要性評価で重要度が高かった「散歩」を具体的な手段として提示することで、症例の行動変容を促した。
すると、介入後の再評価では、注目していた午後のLIPAが増加し、午後に増悪しがちだった痛みの日内の最弱点が18時に移行するなど、疼痛律動性にも変化が見られた。以上から、疼痛律動性と身体活動量を中心とした複合的評価に基づく慢性疼痛患者への治療介入が、疼痛律動性と身体活動に対し肯定的な結果をもたらすことが示された。本グループは今後も、様々なタイプの慢性疼痛患者において治療介入による効果検証を進めていくとしている。