千葉大学大学院の戸丸仁准教授らの研究チームは、2025年7月31日から8月6日に実施した東北海洋生態系調査研究船「新青丸」航海(KS-25-8次研究航海)において、鳥取県沖・隠岐海嶺の海底から、初めて塊状のメタンハイドレートを採取した。
メタンハイドレートは、海底などの低温高圧な環境で形成するメタンを大量に含んだ氷状の物質で、天然ガス資源となる。また、メタンは二酸化炭素の20倍以上の強力な温室効果ガスで、地球環境の劇的変動要因としても注目されている。
日本海では、深部のメタンガスが堆積物中を上方に移動して海底にまで達する直径数百m程度の煙突状のガス逸脱構造「ガスチムニー」が様々な海域で見つかっている。ガスチムニーが発達する海底には、メタンハイドレートの形成により地層が丘状に盛り上がった「マウンド」が多く見られる。
研究チームは今回、ガスチムニーやマウンドの分布を手掛かりに、鳥取県の沖合約145km、隠岐諸島の東北沖約60km、水深約700mの海底に、調査船上から全長6mの堆積物採取装置「ピストンコアラー」を投入し、メタンハイドレートを含む海底堆積物を採取。海底からは、分解したメタンがもとになってできる炭酸塩も大量に回収された。
今回の研究航海では、鳥取県沖だけでなく、新潟県沖や能登半島沖でもメタンハイドレートや炭酸塩を採取している。これにより、日本海における広範囲・継続的な、堆積物からのメタン放出が明らかになった。
今後、地形や海底の地下構造、堆積物採取や生物採取等を組み合わせた海洋調査を引き続き実施することによって、メタンハイドレートの資源としての可能性やメタンの湧出による多様な海底の様子が明らかにしたいとしている。
本研究は「国連海洋科学の10年」の研究活動として採択されている「Chemistry, Observation, Ecology of Submarine Seeps (COESS)」と連携して実施された。また、本研究は東京大学大気海洋研究所、東京家政学院大学、北九州市立大学、東京海洋大学、京都大学、香川大学、明治大学、鳥取大学との共同プロジェクトとして実施された。