岩手医科大学、慶應義塾大学、国立がん研究センターの研究グループは、従来型タバコから加熱式タバコへの切り替え(平均約2年間)により、血液細胞におけるDNAメチル化および遺伝子発現パターンが従来型タバコ喫煙者とは異なるパターンを示すことを明らかにした。
加熱式タバコ製品は、電気的に加熱されたタバコの葉から発生するニコチンや様々な化学物質を含むエアロゾルを吸入する新しいタイプのタバコ製品。火を使い燃焼させる従来型の紙巻きタバコと同程度のニコチンや、従来型タバコより低濃度の発がん性物質も含まれているが、それに伴うタバコ関連疾患の発症リスクは未解明。さまざまな疾患の発症に関係するDNAメチル化や遺伝子発現パターンの変化についても分かっていない。
今回、鶴岡メタボロームコホート研究の参加者1.1万人を対象に、2018~2019年度に実施したフォローアップ調査(追跡調査)に参加し、同意を得た2,789名(うち加熱式タバコ使用者53名、従来型タバコ喫煙者257名)から血液に含まれる末梢血単核球を収集・解析した。その結果、従来型タバコから加熱式タバコへ切り替えた人のDNAメチル化および遺伝子発現パターンは、従来型タバコ喫煙者よりも程度は低いものの、非喫煙者と比べて喫煙に関わるDNAの低メチル化や遺伝子発現の増減が多く見られることが明らかになった。
今回の解析はDNAメチル化部位のみ。加熱式タバコによるDNAメチル化パターンへの詳細な影響に関してはゲノムの網羅的な解析が今後必要という。また、加熱式タバコの長期的な影響は、今回明らかにできていない。今後、長期的な追跡調査を行い、加熱式タバコによる長期的な影響を調べる必要があるとしている。