骨折のない頚髄(けいずい)損傷患者が受傷から24時間以内に手術を受けると、手足に生じたマヒの回復が早まることを、群馬大学と東京大学を中心とした研究グループが突き止めた。
群馬大学によると、頚髄損傷は転倒や交通事故などにより、首の脊髄が傷ついて手足を動かせなくなる外傷で、全国で年間約5,000例発症している。このうち、7割を骨折のない症例が占め、高齢化社会の進行に伴って増加している。指定難病の後縦靭帯骨化症患者は転倒など軽微な外傷で急にマヒが起きることも知られている。
研究グループは大学病院など全国の43施設で8年間かけて患者を治療法の異なるグループに分け、治療効果を調べるランダム化試験を行った。その結果、受傷後24時間以内の手術が受傷後2週間以上経過してからの手術に比べ、1年後のマヒ回復レベルは同程度だったものの、マヒの回復スピードを早められることが明らかになった。
骨折のない頚髄損傷についてはこれまで、早期手術に関する明確な指針がなく、専門医の間で意見が分かれていた。現状では骨折のない頚髄損傷について緊急手術が行われることが極めて少ないが、今回の研究結果を基に治療指針が定められ、専門機関で24時間以内の緊急手術が行われることが期待されそうだ。