北海道大学の佐藤太裕准教授らの研究グループは,竹の繊維の粗密が曲げ強さを最大化するように分布し、理論的に得られた理想的な繊維分布とほぼ一致していることを発見した。新たな生体模倣技術として、先進材料開発につながることが期待される。
竹は,軽さと丈夫さを併せもった天然の機能材料だ。その理由は,空洞部分が多く、木質部に鉄鋼と同程度の剛性をもつ繊維がたくさん埋め込まれていることによる。一方で、竹の横断面を見ると,埋め込まれている繊維の分布は均一ではなく、断面の内側から外側へ、密度が徐々に高くなっていることがわかる。
そこで研究チームは、断面の繊維分布と幹全体の曲げ強さの関係を、構造力学理論を用いて解析。実際の竹から得られた繊維分布の測定データと比較した。
理論的な解析の結果,断面を貫く繊維の総数により、曲げ剛性を最大にする繊維分布が異なることを発見した。繊維が少ない場合、内側から外側へ繊維密度を一次関数に従い増加させると,竹の曲げ剛性が最大。繊維が多い場合、繊維密度を内側から外側へ二次関数に従い増加させると,曲げ剛性が最大になることがわかった。
一方、野生の竹は、根本と先端で断面の繊維分布が異なり、根本では繊維が多く、先端近くでは繊維は少ない。そして測定データの繊維分布は、竹の根本から先端に向かって傾斜分布が二次関数形から一次関数形へ推移しているのを発見、理論と一致した。
この成果から、中空円筒一般の曲げ剛性を最大化する最適傾斜分布は、竹断面の繊維分布と酷似、竹は最高性能の傾斜機能材料であるとし,軽くて丈夫なパイプライン構造など新たな中空円筒構造の設計開発につながるとしている。
論文情報:【PLOS ONE】Bamboo-Inspired Optimal Design for Functionally Graded Hollow Cylinders