バイクシェアリングシステム(BSS)のビッグデータ解析で、東京理科大学が現実の都市における自転車利用パターンの統計的特徴を明らかにすることに成功した。
CO2排出量低減や交通渋滞の緩和にもつながる、持続可能な公共交通機関として注目されるBSS。しかし、利用者はどのポートで自転車を借りても返却してもよいという利便性の一方で、各ポートの自転車台数には偏りが生じるため、偏りを解消するための自転車の効率的再配置戦略が求められる。
本研究では、こうした戦略開発と社会実装のために、現実のユーザと都市全体のBSSの動態を明らかにすることが必要と考え、米国の4つの大都市(ボストン、ワシントンD.C.、ニューヨーク、シカゴ)の実際のBSSを対象に自転車の利用状況を解析した。
年間で最も自転車の使用台数が多くなる8月を選び、4都市のBSSの全ポートから抽出した「ユーザがいつどこで自転車を利用したか」という履歴データを解析に用いた。まず、4都市の全てのBSSで自転車の過不足が生じており、中でもニューヨークで過不足の台数が最も多いことが判明した。貸出・返却頻度もニューヨークで特に多かったが、都市ごとの差異が大きかった。
BSSにおける貸出と返却の利用パターンについては、昼間に利用が偏るなど、4都市に共通する周期的なパターンを認めた。さらに、平日と週末、日中(8時~21時)と終日(24時間)で統計的特徴の類似が認められた。しかし、ニューヨークの自転車利用パターンがポアソン過程の特徴を有する(貸出・返却が他の事象の影響を受けずランダムに発生し、時間あたりの偏りが無い)のに対し、他の都市では必ずしもそうではないことが示唆されるなど、規則性が都市によって一部異なることも発見された。
本研究が見出した現実の大都市におけるBSSの実態は、理論研究に基づいたBSSの偏り改善アルゴリズムを、現実的な指標を用いて評価検証する上で重要な基盤となると考えられる。