NOSAI北海道、岡山大学、北海道大学、麻布大学の研究グループは、ウシの子宮内細菌叢は農場ごとの飼養管理の違いで異なる細菌叢を形成し、受胎性と関連して変動することを明らかにした。
卵巣・子宮に異常がなく、発情周期も正常であるにも関わらず、人工授精を3回以上繰り返しても受胎しないウシ(リピートブリーダー)は、分娩間隔の延長をきたし、1日700円/頭もの経済的損失を酪農家に与えている。リピートブリーダーの占める割合は5~24%とされ対策が求められている。
近年、解析技術の進歩により、これまで無菌とされてきた子宮において子宮内細菌叢の存在が明らかにされ、低受胎の新たな原因として注目されている。研究グループは今回、ウシの子宮内細菌叢検査の有用性について検討した。
飼養管理が異なる4つの農場のウシ計69頭の子宮内細菌叢を解析し、農場、給与飼料、飼育方法に関して子宮内細菌叢の相違を検討した結果、農場、給与飼料、飼育環境が子宮内細菌叢に影響を与えていることが分かった。
さらに、1つの農場における31頭を対象に子宮内細菌叢と低受胎の関連性を解析したところ、特定の細菌(Arcobacter菌)が低受胎と関連していることが判明。加えて、細菌同士の協力体制を見出す解析(共起ネットワーク分析)を行い、低受胎に関連する細菌間の正と負の関係性を見出した。これにより、低受胎に関連する細菌群が検出できた。
研究が進むことで、低受胎の原因を診断するための新たなアプローチ方法として子宮マイクロバイオーム検査(子宮内の微生物環境が胚の着床に最適かどうか判断する検査)が確立され、畜産現場における繁殖管理の改善に寄与することが期待されるとしている。