総合研究大学院大学などの研究グループは、1000年以上前のオホーツク文化期に該当する古人骨から採取した歯石を分析し、ヒト由来および口腔内細菌由来の古代タンパク質を同定した。研究には他に、岡山大学、海洋研究開発機構、金沢大学、東京大学、琉球大学大学院、札幌医科大学の研究員が参加。
歯周病は現代人が歯を失う主な原因だ。実は、過去に日本列島に住んでいた人々も歯周病にかかっていたことが、これまでの研究から明らかになっている。しかし、どのような口腔内細菌だったかは不明だ。本研究では、北海道の礼文島から出土した、オホーツク文化期に該当する約1000年以上前の女性の人骨から歯石を採取し、質量分析を利用したプロテオミクスを実施した。
その結果、口腔内細菌由来から15種類のタンパク質を同定した。特に注目すべきこととして、現代の歯周病の原因として名高い、レッドコンプレックスの一部の細菌由来のタンパク質も同定できた。さらに、現代人において歯周病と関連することが分かっている口腔内細菌由来のタンパク質も同定した。また、ヒト由来のタンパク質としては、唾液中の抗菌ペプチドや免疫応答タンパク質が同定された。
歯石から得られる情報は、過去に生きた人々の健康状態やライフヒストリーを詳細に解明するための貴重な資料となる。今後、過去の疾病の実態を調べる研究が進展すれば、人と共存してきた細菌が時間とともにどのように進化してきたかが明らかになり、現代人を悩ます疾患の起源や進化的な原因を解明できる可能性もあるとしている。