畿央大学ニューロリハビリテーション研究センターと長崎大学の西祐樹氏らは、横断性脊髄炎1症例に対してしびれ同調経皮的電気神経刺激(TENS)を行うことで異常感覚および上肢活動量が改善したことを明らかにした。
脊髄炎は3例/10万人のまれな炎症性神経障害であり、脊髄炎由来の疼痛や異常感覚は治療抵抗性があることが知られている。脊髄炎による神経障害性疼痛・異常感覚に対するリハビリテーションの効果は、希少疾患ゆえに十分に検証されず、そのため、症例報告の蓄積は臨床的意義がある。研究グループはこれまで、しびれ感に対してしびれ感と一致したパラメーターの電気刺激を行うしびれ同調経皮的電気神経刺激(TENS)を開発し、有効性を報告している。
研究グループは今回、しびれ感およびアロディニア(触るだけで痛い症状)によりADL(日常生活動作)が阻害されている横断性脊髄炎1症例に対して、しびれ同調TENSを行った。その結果、しびれ感、アロディニア、上肢活動量が即時的に改善した。また、しびれ感での長期効果を示したが、アロディニアでは観察されなかった。上肢活動量や上肢ADLにおいては持続効果を認め、しびれ同調TENSはしびれ感やアロディニアのみならず、ADLの改善に寄与する可能性を示した。
しびれ同調TENSは服薬治療への抵抗性が高い異常感覚においても効果を示す可能性があり、新たな治療選択の一つとなる可能性がある。今後は、他の疾患におけるしびれ感やアロディニアに対する効果のみならず、ADL等への波及効果を検証していく予定としている。