龍谷大学の内田欣吾教授らの研究グループは、独自技術を用い、シロアリの翅(はね)の表面構造を再現することに世界で初めて成功した。研究には他に旭川医科大学、理化学研究所、東京薬科大学が参加。
近年、生物の多様な機能・構造を模倣し利用するバイオミメティクス(生物模倣科学)の研究が盛んだ。ゴボウの実を真似たマジックテープやハスの葉の超撥水性表面など、様々な生物の構造を模倣した機能性材料が数多く開発されてきた。
オーストラリアのあるシロアリは、天敵から身を守るために雨季に新しいコロニーへと飛び立つ。翅には大きな水滴を弾き、小さな水滴は集めてある大きさにし、羽ばたきによって表面から放出させる特異的なシステムがある。
研究グループは、このシロアリの翅の構造を再現するため、光を照射すると可逆的に色が変化する「フォトクロミック分子」を二種類混合して結晶膜を作成した。混合前の単独の分子によって形成された表面に紫外光を照射すると、フォトクロミック反応を起こし、二種類の異なる大きさの結晶が表面上に並んだ結晶膜が作製できた。この表面構造は、シロアリの翅の表面構造と非常に類似していた。
そこで、作成した表面に霧吹きで小さな水滴を吹きかけると、直径が約100μm以下の水滴は吸着し、それ以上の水滴を弾いた。これらの水滴のサイズは、それぞれ霧、雨滴のサイズと一致しており、構造を真似ることでシロアリが示す大きな水滴を弾き、小さな水滴を集める機能を再現することに成功した。
このような表面は表面をきれいに保つセルフクリーニング材料への利用や、空気中の霧から水滴を捕集できる材料、水滴を保持できる機能材料としての応用も期待される。