京都大学の研究グループは、p38-MAPキナーゼという酵素のはたらきを抑えることが、あらたな外用薬の開発につながることを明らかにした。
「乾癬」は、刺激を受けやすい場所や加齢で発症しやすくなる慢性の皮膚炎で、本邦では1000人に2人から5人が罹患しているといわれる。皮膚炎の治療にもっとも広く用いられている薬はステロイド外用薬だが、皮膚が乾燥したり、吹き出物ができやすくなったりする副作用が知られているため、とくに経過の長い乾癬では、あたらしい外用薬の開発が期待されている。
本研究グループは以前に、皮膚の表面をおおう細胞である表皮細胞のなかのTRAF6という物質が、乾癬の発症にも持続にも必須の物質であることを発見した。そこで、TRAF6によって活性化される細胞内の物質を調べ、そのうちp38-MAPキナーゼという酵素に着目。p38-MAPキナーゼは乾癬の病変部において活性化している上、外からの刺激や加齢によって活性化しやすくなることから、p38-MAPキナーゼの活性化が乾癬発症の要因ではないかと考えた。
研究グループはマウスの皮膚にp38-MAPキナーゼの活性化薬を塗る実験を行い、乾癬に似た症状を発症することを発見。一方、ここに、p38-MAPキナーゼの阻害薬をあわせて塗った場合は、乾癬を発症しないことがわかった。さらに、乾癬の患者からとった病変部の皮膚にp38-MAPキナーゼの阻害薬を作用させると、皮膚組織で炎症性物質の産生がおさえられることを発見した。
以上から、p38-MAPキナーゼの活性化が乾癬発症の十分条件であること、したがって、p38-MAPキナーゼをおさえる外用薬の開発が、乾癬をふくむ皮膚炎の治療につながることが示唆された。研究グループは今後、本成果から、ステロイドに代わるあたらしい外用薬開発に向け、可能性を探っていくとしている。