大阪大学蛋白質研究所の栗栖源嗣教授が代表を務める日本蛋白質構造データバンク(PDBj)は、アジアの代表機関として、新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)の新しく解析された蛋白質構造情報を蛋白質構造データベースに登録した。また2020年3月11日からPDBjのホームページに新型コロナウイルス特集ページを開設し、一般公開を始めた。新型コロナウイルスに直接関係あるエントリーだけを厳密に抽出してデータ提供し、毎週水曜日、日本時間の午前9時に最新エントリーを追加更新する。情報は日英中韓の各言語で提供する。
蛋白質構造データベースは、世界で唯一、実験的に決定した生体高分子の3次元構造を保存するデータベース。毎日世界中で200万件以上がダウンロードされて幅広い研究に活用されており、抗インフルエンザ薬ザナミビル(商品名リレンザ)やオセルタミビル(商品名タミフル)の開発にもつながっている。
蛋白質構造データベースはPDBjを含む日米欧の世界4拠点が共同で登録・維持・管理を行っており、世界中の研究者は構造解析した蛋白質の構造情報は必ず事前に登録することになっている。通常、登録済みPDBデータは該当の情報を含む研究が論文として発表されるまで非公開とされるが、今回、新型コロナウイルスの構造情報がデータベースに登録された場合、個別に登録者(研究者)と連絡をとり、論文発表を待たずに即時公開することを強く奨めることとなった。
今回の対応について栗栖教授は「国際的なデータベースの構築拠点が国内にあり、国際的に広く信頼されている利点を最大限に生かして、正確で使いやすいデータを日本語(中国語、韓国語)で迅速に提供します。平時には、水道や都市ガスのように使えて当たり前だと思われている情報基盤は、緊急事態になればなるほどスピード感をもって、いつも以上の精度で提供することが重要であることを痛感しています。」とコメントしている。