千葉大学大学院の倉島洋介准教授(医学研究院)の研究グループは、東京大学と共同で、食物アレルギーの唯一の治療法だが、その機序にいまだ不明な点が多かった経口免疫療法の治療メカニズムの一端を解明した。
食物アレルギーは、白血球の一種であるマスト細胞(免疫細胞の1種)がアレルゲンを受容し、ヒスタミンなどのアレルギー物質を放出することで発症する。経口免疫療法は有望な治療法だが、研究段階の治療法で情報が少なく、治療中の副反応や成功率の低さも課題だ。経口免疫療法により、マスト細胞の低応答化(アレルゲンに対し活性化しない状態)と、アレルギーの抑制細胞である制御性T細胞が増えることは分かっていたが、その関連性は不明だった。
今回、食物アレルギーのマウスに経口免疫療法を行った。アレルギー症状が軽減された群では、マスト細胞は低応答の状態になり、さらに、アレルギーを抑制する制御性T細胞を増やすタンパク(IL-2)やアレルギー症状を抑えるタンパク(IL-10)を産生し、アレルギーを起こす悪玉細胞からアレルギー反応を抑える善玉細胞へとその性質が変化していることを発見した。これにより、アレルギー治療の成功には、マスト細胞の低応答化だけではなく、マスト細胞自身がアレルギーを抑える細胞へと機能を転換させるメカニズムが重要であることが判明した。
今後、アレルギーの悪玉細胞を善玉細胞へと効率的に切り替えるスイッチ機構が分かれば、それを応用した切り替え促進薬の開発が期待される。さらに、スイッチ機構を制御し悪玉細胞から善玉細胞への切り替えを安定的に実施することで、食物アレルギー治療の精度向上に貢献できるとしている。