母親の子宮頸がんが出産時に子どもの肺へ移行する現象が世界で初めて発見された。国立がん研究センター、東京慈恵会医科大学、聖路加国際病院、国立成育医療研究センター、東邦大学、北海道大学病院からなるチームが報告した。
この発見は、小児がん患者の肺がんの遺伝子解析を行った際、患者本人ではない他人の遺伝子配列が検出されたことをきっかけにスタートした。肺にがんを持つ男児2名から他人由来の遺伝子が検出され、男児2名の母親がともに子宮頸がんを発症していたことから、両者の細胞組織の遺伝子を比較したところ、男児の肺のがん細胞は2名ともに母親由来の遺伝情報を持っていた。
母親のがん細胞が子どもに移行するケースは皮膚がんなどで知られているが、今回見つかった男児の小児がんは肺のみに見つかっていることから、生まれて初めて泣いたときに、母親の子宮頸がんのがん細胞が混じった羊水を肺に吸い込んだことによって、母から子どもの肺へがん細胞が移行したと考えられるという。
この発見から、母親の子宮頸がんの予防は、母親由来のがんが子どもに移行するリスクの低減にもつながることが示唆された。また、男児の1名は、医師主導治験により免疫チェックポイント阻害剤ニボルマブを投与した結果、がんが消失するなど劇的な効果がみられた。子の免疫細胞にとって、母親由来のがん細胞は異物と認識されるため、免疫応答を高める作用を持つ免疫チェックポイント阻害剤が有効にはたらいたと考えられる。母親のがんが移行した小児がん患者では、免疫チェックポイント阻害治療が有望な選択肢となる可能性も示されたといえる。