東京大学の横山広美教授を中心とする、東京大学・NIRA総合研究開発機構・滋賀大学・名古屋大学の研究グループは、日本に根強い数学や物理学の男性的イメージを説明する新モデルを提案し検証した。
数学や物理学を学ぶ学生は理系の中でも女性比率は極めて低い。要因にはこうした分野の男性イメージの強さがある。同グループの以前の調査では、女性に向くかと聞いた18分野のうち、物理学は下から2番目、数学は下から4番目だった。
今回、研究グループは、そのような要因を3つ(分野の男性的カルチャー、幼少期の経験、自己効力感の男女差)にまとめた先行研究を利用し、さらに要因4(ジェンダー不平等の社会風土)を加えた。各要因はそれぞれ複数の要素を含み、これらに対応した質問項目を用意して男性的イメージを測定。新モデルに基づいてインターネット調査を実施した。
その結果、要因1から数学・物理学を男性的とみる傾向がある人が判明した。それは、数学・物理学を学んだ人が就く「職業」が男性向きと思う人、女性は数学的能力が低いという「数学ステレオタイプ」を持つ人、そして、数学・物理学を学ぶ人に「頭が良いイメージ」を抱く人だ。さらに、要因4の要素のうち、「女性は知的であるほうがよい」ことに否定的な人ほど数学に対して男性的イメージを持つことも分かった。これらの結果は、優秀さが男性のものであるという意識が学術分野の男性的イメージに影響を与えていることを示唆している。
今回の新モデルによる研究成果が、一部学術分野に男性的イメージをもたらす要因の解明に役立つとともに、ダイバーシティ推進政策や人材育成政策に貢献することが期待される。