なぜ、宇宙航空理工学か
このような観点から本学では、2014年には課題対応型の新学科、ロボット理工学科を開設しましたが、次の柱に育てたいと考えたのが宇宙航空工学分野で活躍できるエンジニアを育成する宇宙航空理工学科です。MRJ(三菱リージョナルジェット:Mitsubishi Regional Jet)や日本のロケット技術に対する評価の高まりを受けて、近年、宇宙航空工学分野への期待が高まってきました。この分野は、最先端エンジニアリングであると同時にその裾野の広さに特徴があります。航空機を例にとると、一機に使われる部品点数は一台の車の20万点をはるかに凌ぐ300万点。これを組み合わせ統合するには複雑な系の制御という、エンジニアとしては高度な能力が求められます。各パーツについてよく知っているのに加えて、生産管理や社会のニーズへの対応など、全体を捉える思考回路も必要ですから、それらの育成を図ることは、工学教育の次の段階の開発につながると期待しています。
現在、ものづくり大国日本の稼ぎ頭は自動車産業ですが、アジア諸国の追い上げもあり、それだけにいつまでも頼っているわけにはいきません。宇宙航空産業はその先端性において、日本がエンジニアリングにおける世界的な地位を維持するにふさわしい分野、自動車産業の次を担う分野と言っても過言ではないと思います。加えてその裾野の広さは、中堅中核的な技術者の輩出に強みを持つ本学にとっては、大きな魅力です。
本学が地の利に恵まれていることも、本構想の背景にあります。本学の立地する東海地域は、三菱重工や川崎重工などが戦前から航空機を生産、近年はロケット生産も加え、日本で唯一の宇宙航空機産業の集積地になっています。ちなみに航空機の部品生産の全国シェアは50%、機体は70%。MRJだけでなく、アメリカのボーイング787等の部品や機体構造部の製造拠点としても知られています。