過去、追試が1週間繰り下げられたことも。受験生にとって有り難い救済措置とは?

今から11年前、2009年に新型インフルエンザが流行しました。そのとき、大学入試センターは、大学入試センター試験の追試験を当初予定から1週間延ばして1月30日(土)、31日(日)に行い、試験会場も全国69会場に増設しました。この時の受験者数の想定は5万人となっていました。受験者数は実際には509人にとどまりましたが、今回については受験者数がさらに多くなるのか、少人数で収まるのか予想することは非常に難しいでしょう。いずれにしても、大学側が、こうした事態を想定して受験生のために準備を進めておくことが大切です。大学側の準備が整っていれば、受験生の負担は多少なりとも軽減されることになるからです。

この他、今から大学側で準備に着手できることとして考えられることは?

①追試験の準備

共通テストだけでなく、個別大学の試験でも追試験の実施が予定されていると受験生は安心できます。2月の入試を3月の入試へ振替受験できる仕組みでも良いのですが、それらのさらにバックアップがあると、とても安心です。大学にとっては大変な負担ですが、今から着手できれば、全学部統一入試として1種類の問題を新たに作成することで、追試験の実施が可能となる大学もあるでしょう。

場合によっては、当該大学の過去問を使用することも考えられます。ただ、東京大、京都大などの難関大は過去20年以上の過去問が出回っていますので、この方法は取れません。しかし、中堅大学であれば10年分の過去問を解く受験生は多くはありません。10年前の自大学の問題を使用すれば、追試験の実行可能性も高まります。なお、この場合、現行の教育課程ではなく旧教育課程に即した出題となっていますので、特に数学と理科は出題内容をチェックしてから使用することが必要です。

また、作問スタッフが限られる小規模な大学同士で、それぞれで教科を分担して作問し、共同利用することもひとつの方法ではないでしょうか。なお、追試験を実施しないで検定料を返金する大学もありますが、できれば受験のチャンスが欲しいというのが受験生の心理です。

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神戸 悟(教育ジャーナリスト)

教育ジャーナリスト/大学入試ライター・リサーチャー
1985年、河合塾入職後、20年以上にわたり、大学入試情報の収集・発信業務に従事、月刊誌「Guideline」の編集も担当。
2007年に河合塾を退職後、都内大学で合否判定や入試制度設計などの入試業務に従事し、学生募集広報業務も担当。
2015年に大学を退職後、朝日新聞出版「大学ランキング」、河合塾「Guideline」などでライター、エディターを務め、日本経済新聞、毎日新聞系の媒体などにも寄稿。その後、国立研究開発法人を経て、2016年より大学の様々な課題を支援するコンサルティングを行っている。KEIアドバンス(河合塾グループ)で入試データを活用したシミュレーションや市場動向調査等を行うほか、将来構想・中期計画策定、新学部設置、入試制度設計の支援なども行なっている。
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