2027年までに女子学生比率を5%増

 本学の行動計画である「京都大学重点戦略アクションプラン」では、男女共同参画社会の実現、女性活躍推進のために、別途策定している「京都大学男女共同参画推進アクションプラン(2022~2027年度)」の内容を盛り込み、女性教員・女子学生の比率を高めることを目指す。欧米の一流大学について、ハーバード大学、イェール大学、オックスフォード大学、ケンブリッジ大学などで学生の男女比はほぼ1対1。日本の大学はそれに比べるといかにも見劣りする。この低さでは、女性の能力を正当に評価していないのではとの誤解も招きかねない。日本においても優秀な女性教員が多いことは、本学に限らず明白だ。ちなみに、今春の特色入試合格者で、初の飛び入学生も女子だ。

 研究室での女性教員の採用や登用をはかるには、入学してくる女子学生を増やす必要がある。学部の女子学生比率は2021年度で22.2%。部局別に見ると、教育学部(44.9%)、薬学部(41.5%)、文学部(39.0%)、医学部人間健康科学科(66.2%)、農学部(35.0%)と高いところもあるが、理学部(8.4%)や工学部(9.9%)のように低い学部もある(学部別は2021年5月1日調べ)。女子受験生がキャリアパスへの不安を感じていることが要因の一つであるかもしれないので、それに対する理解を深めてもらう必要があると考えている。

 アクションプランでは、6年間で女子学生比率の5%増を目指す目標を掲げた。本学の一般選抜では学部単位の独立性が高いため、細かく戦略を立てやすい。高校生のための体験型学習講座「ELCAS(エルキャス)」(2008年に理学部からスタート)や、学びコーディネーター事業、都道府県教委との連携といった高大連携事業で、理系女子生徒向けの講座を開設したり、女子学生や女性教員を講師として派遣するなど、女子生徒へ直接アピールするのも一つの方法だ。

 また、7年目に入る特色入試は、入学者の52.5%(2021年度入試)が女子。学内での評価も定着してきているから、募集定員を増やすことなども検討したい。

 

 

入試改革

特色入試の発足当初3年間、準備から実施に移行する過程で農学部委員として参画した。発足してしばらくの間は、どんな学生が入学してくるのか、一般選抜で入学する学生にうまく溶け込んでくれるかなど、不安もあったが杞憂だった。

 特色入試入学者の多くは、従前からの一般選抜の入学者に伍して頑張りたいという思いが強いようだし、当初から博士課程に進みたいなど、目的意識もはっきりしている。『学びの設計書』の提出など、目指す学問分野への興味、入学後の勉学意欲などを問うていることによるのだろうが、やはり入学後に大事なことの一つは意欲だということがよくわかる。

 選抜方法等の見直しも進んでいる。理学部では2021年度入試から、「数理科学入試」(定員5人)に「生物科学入試」(定員5人)を加えた。生物科学入試では筆答試験を課さず、提出書類と口頭試問及び大学入学共通テストの成績で選考する。2023年度入試へ向けては、経済学部が総合型選抜から学校推薦型選抜に転換し、「文系型入試」(15名)と「理系型入試」(10名)を設ける。推薦要件には文系型入試もしくは理系型入試の求める人物像に合致した人材という項目を加え、「理系型入試」では数Ⅲの履修と理系科目のいずれかで顕著な成績を残すこと、「文系型入試」では、課外活動等で顕著な実績を上げることなども要件とする。詳しくは学生募集要項で確認してほしい。

 一方、広く海外から優秀な学生を受け入れる『Kyoto iUP(Kyoto University International Undergraduate Program)』も、キャンパスのグローバル化や学生の多様化、優秀な人材を日本へ招くためにも力を入れてきたが、コロナ禍によって大きな打撃を受けている。世界的な感染状況の好転を待つしかない。今後入学生が期待される国としてインドが挙げられる。インドでは優秀な生徒が多いが、彼らの関心は欧米やオセアニアの有力な大学にあり、日本へは言葉のハンデが障壁となっている。彼らの日本への関心をどう高めるかが大きな課題だ。

 

研究者養成の強化

 研究を重視する大学では研究者養成も重要だが、本学に限らず、博士課程進学者の減少が大きな問題となっている。これを受け、国による新たな施策、JST(科学技術振興事業団)による「次世代研究者挑戦的プログラム支援事業」が今年度からスタートした。京都大学では、博士課程学生1学年あたり160名程度が恩恵を受けられるようになった。これに昨年度スタートしたフェローシップ創設事業100名程度と、日本学術振興会(学振)による特別研究員DC1・DC2(300名程度)を合わせると、全研究科の入学定員の約半数がカバーされることになる。これは従前に比してかなりの改善となり、博士課程進学者の増加が期待される。

 

 

高校生へのメッセージ

 最近の高校生と接していると、高校時代にある程度の進路を決めておかなければならないと考える生徒が増えていると感じる。総合型選抜のウエイトが高まるとの予測から、進路を明確にしておかないと≪意欲がない≫とみなされると考えるのだろうか。あるいはそういう指導が行きわたっているのか。進路について考えることはもちろん大事なことだが、高校生の多くは教科のイメージで学問内容を想像することになるので、細かく分化し、あるいは融合するなどして複雑化する学問分野について知り、自らの進路を決めるのは必ずしも容易でないかもしれない。

 本学の理系学部では入学時に学科が決まっているが、工学部や農学部のように学科の多い学部でも学科のカバーする領域はこれまでよりずいぶん広くなっている。大学入学後の勉強を経てから、専攻を決めることも十分ありうる。

 

京都大学理事・副学長(財務・入試担当)

村上 章先生

1956年広島県生まれ。1978年3月京都大学農学部卒業、1980年3月京都大学大学院工学研究科修士課程修了、1980年4月兵庫県技術吏員、1982年4月京都大学農学部助手、1994年10月同助教授、1997年4月同大学院農学研究科助教授、1999年10月岡山大学環境理工学部教授、2009年10月京都大学大学院農学研究科教授、2019年4月京都大学大学院農学研究科長・農学部長を経て2020年10月から現職。専門は農業土木学、地盤工学。大阪府立豊中高等学校出身。

 

京都大学

「自重自敬」の精神に基づき自由な学風を育み、創造的な学問の世界を切り開く。

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大学ジャーナルオンライン編集部

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