【青山学院大学】
阪本浩学長に聞く2021年度入試結果
志願者数は減少したが学部独自試験を軸にした入試改革には手応えも
改革のポイントは学部独自試験
青山学院大学は2021年度入試の一般選抜で「個別学部日程」、「全学部日程」、「大学入学共通テスト利用入学者選抜」の3方式で選抜を実施しました。中でもポイントとなるのは「個別学部日程」です。多くの学部では、大学入学共通テスト(以下、共通テスト)と各学部の独自試験の組み合わせによって選抜する方式を導入しました。
また、独自試験は特定の教科・科目に依らない複数の教科で構成された「総合問題」や「論述」で実施され、解答方法も記述・論述式が中心です。特定の教科・科目の試験を行う学部もありますが、解答方法は記述・論述式が含まれています。独自問題の出題方針は、各学部のアドミッションポリシー(AP)に基づいているため、学部によっては英語・資格検定試験のスコアを活用するなど、まさにそれぞれのAPに基づいた入学者選抜です。なお、記述・論述式にしているのは、受験生一人ひとりの確かな知識・技能に基づく思考力・判断力・表現力を丁寧に評価すべきだと考えているからです。
初中等教育の改革とも連動
今回の改革の背景には、文部科学省が進める高大接続システム改革があります。2025年度入試からは新学習指導要領で学習した高校生が大学入試に挑みます。初中等教育が、思考力・判断力・表現力を重視した教育に転換し、これからの日本を担う若者たちを育てていこうという改革の理念に共感し、改革を決意しました。
一方で、こうした改革に対して、中央教育審議会答申注)でも、現在の知識偏重の大学入試が阻害要因になっているのではないかとの指摘がありました。高校以下の学校教育とともに大学入試も変わらなければなりません。現に国立大学は、共通テストと個別試験を組み合わせた入学者選抜を行っており、国立大学の個別試験は90%近くが記述・論述式問題を出題しているという調査結果もあります。
ただ、全てを一気に変えるのは、受験生の準備状況なども含め、難しい課題もあります。そのため、改革初年度は移行期間と考え、従来型のいわゆる私大3教科型方式も併用しています。
志願者の減少はある程度想定
初年度は結果として「個別学部日程」の志願者数が減少しましたが、改革を決めた時からある程度の減少は覚悟していました。その理由として、一つは共通テストと組み合わせた方式であることです。初めて実施される共通テストは受験生にとって未知のテストです。受験生が不安に思うのは当然です。さらにもう一つは、学部独自試験として記述・論述式問題を出題したことです。私立大学で、従来型の試験とは異なる試験をここまで大規模に展開している大学は他に例を見ません。
予想外だったのは新型コロナ感染症の拡大です。これによって受験生はさらに慎重な出願行動を取り、特に首都圏以外の地域からの出願が減少しました。そのため予想を上回る志願者数減少となったと考えています。ただ、私立大学全体の志願者数が減少しているにも関わらず、「全学部日程」では前年比107%と増加しています。
各学部がより主体的に選抜に関わる
改革を実施して良かったことは、高校によっては記述・論述式問題を高く評価してくれたことです。従来から主体的・対話的・深い学びを実践している高校からは、修得した力をそのまま発揮すれば良いので特別な対策が不要な出題形式だと受け止めていただきました。また、学内では学部独自問題としたことで、各学部の先生方がこれまで以上に入学者選抜に深く関わることとなりました。総合問題、記述・論述式問題は従来よりも多くの作問者、採点者が必要です。これまで以上に多くの先生方が入学者選抜に深く関わり、自分たちが求める受験生像について、これまで以上に真剣に議論しました。記述・論述式ですので、採点の際には公平公正な採点ができているか厳重にチェックをしています。学部によっては採点作業がこれまで以上に長時間に及びました。
学部独自試験の内容は、言わば受験生に対するメッセージです。そして、受験生が作り上げた答案は、そのメッセージへの回答です。改革初年度は課題も残りましたが、今後、私たちが反省すべき点があれば、受験生の視点で改善していきたいと考えています。
個性を伸ばせる大学を選んで欲しい
これからも入学者選抜に込めた大学の意図を、受験生により明確に理解してもらえるように努力を続けていきたいと思います。そして、受験生が大学を選ぶ際には、入試難易度ランキングや偏差値に依らないで、学びの内容、取得資格、将来どのような道に進めるのか、などを自分の目で見てよく考えて欲しいと思います。自分の個性を本当に伸ばせるのはどの大学なのか、という視点で選んで欲しい。結果として、それが本学であればこんなに嬉しいことはありません。理想論ではなく、現実にそうなることを目指して、私たちはチャレンジを続けていきます。
【立教大学】
統括副総長 石川淳教授に聞く2021年度入試結果
教育改革が入試改革の契機、受験機会の拡大で志願者数も増加
外部試験の全面導入と受験機会の拡大
立教大学の2021年度入試における改革のポイントの一つは、英語資格・検定試験(以下、検定試験)と大学入学共通テスト(以下、共通テスト)の全面的な導入です。文学部の一部の試験を除き、大学独自の英語試験を廃止し、指定された検定試験のスコアまたは共通テストの英語成績を合否判定に利用します。複数のスコアで出願した場合は、最も高得点に換算されたスコアが合否判定に採用され、試験の種類による有利、不利はありません。
もう一つのポイントは受験機会の拡大です。東日本では初めて、原則、全学部が同じ日程・制度で受験できる「全日程全学部日程」を実施しました。本学の教育理念やカリキュラムに賛同し、本学で学びたいという熱意を持つ受験生に対して、できるだけ門戸を広げたいと考え、同じ学科の受験機会をこれまでの最大2回から5回にまで拡充しました。試験日が異なれば違う学科を併願することも可能です。
英語教育のカリキュラム改革が背景に
今回の改革に至った背景には教育改革があります。グローバル教育を支える「英語の立教」の教育をさらに充実させるため、本学では英語教育のカリキュラム改革を実施しました。そのため、入試段階でも英語4技能をしっかりと測定し、カリキュラム改革がより効果的に機能することを目指しました。
従来からあった少人数クラスの科目「英語ディスカッション」に加え、新たな科目「英語ディベート」を設置し、さらに、自らの専門科目を英語で学ぶ「CLIL(内容言語統合型学習)」科目を設置するなど、“英語で学ぶ”ための言語教育の体系を整えました。こうしたカリキュラムを理解した上で、立教大学で学ぶ意欲と能力のある入学者を得るためには必要な入試改革でした。
新しい入試制度が広く理解され志願者増加
実際に志願者数が増えたことは、それが目的だった訳ではありませんが、大変有り難いと思います。増加の理由としては、想定していた以上に検定試験のスコアを持つ受験生が多かったことがあげられます。本学は、もともと受験生の首都圏比率が高いのですが、首都圏は検定試験のスコアを持つ高校生が多いことも影響しています。こうしたグローバルな関心を持つ層が、我々の教育改革に呼応してくれたこと、新しい入試制度がそれにマッチしていたことなどがあったのでしょう。志願者ベースで見ると、検定試験のスコアと共通テストの英語成績の両方で出願した受験生が70%、共通テストの英語成績のみは24%、検定試験のスコアのみは6%です。この数字から、受験生は本学の入試制度を完全に理解して出願してくれたことが分かります。
また、受験機会が増えたため、一人当たりの併願件数は1.98件から2.25件に増えています。この結果は、立教大学で学びたいという強いマインドを持った受験生が、併願の機会を生かして受験してくれたと捉えています。
多様性と多元的な視点が重要
新しい入試制度による新入生については、まだ授業が始まったばかりで詳しいことは分かりませんが、これまでの実績から、英語4技能を重視した入試での入学者は、グローバル志向も強く、留学希望者も多いという特徴があります。そのため、同じような傾向が現れるのか、これからの学生の成長が楽しみです。
また、志願者ベースでは首都圏比率が従来よりもやや上がりましたが、これは課題の一つです。グローバル教育を展開する上では学生の多様性は大切です。その根底にあるのは、多元的なものの見方の重要性です。そのため、出身地一つを取っても多様な方が望ましいでしょう。ただし、それは国内に限ったことではありません。今後は海外からより多くの学生を受け入れられるよう、カリキュラム改革とそれに伴う入試改革を検討していく必要があると思います。キャンパスには出身、年齢、性別など多様な学生がいて、お互いに刺激し合うのが理想の姿です。我々はそれに向けてこれからも着実に改革を進めていきます。
今、まさに我々は、これまで当たり前だと思っていたことが、当たり前ではないということを経験しています。日本の常識が世界の常識ではないことはたくさんあります。これからの社会では、そういう多元的な視点を持つことが極めて重要です。加えて、今回の新型コロナ感染症に見られるように、ある特定の課題が、社会や人々に影響を及ぼす要因は複雑で、単純な方法では解決できません。しかし、我々は複雑な課題を複雑に受け止めて、それでもなお、諦めずに取り組み、前に進まなくてはなりません。そうした課題に立ち向かう意欲のある受験生に本学を目指してもらいたいと思います。我々はその意欲に応えるカリキュラムを用意して待っています。
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