国公立大は難関大への強気の出願が目立つも、共通テスト平均点ダウンの影響も見られる
国公立大は前述のように、難関大の志願者数が増えています。東京大、京都大の前期日程の志願者数前年比はそれぞれ105%、102%となっています。共通テストの平均点ダウンにも怯まず、受験生は強気で出願したようです。東京大は前期日程で各類とも合格最低点が30点近く低下して話題となりましたが(満点は一次・二次合計550点)、文Ⅰ・文Ⅲでは現役生が、理類では既卒生が合格者における占有率を上げています。理類の数学が難化したことが既卒生に有利に働いたのかも知れません。
このほかの難関大でも、北海道大103%、東京工業大105%、一橋大106%、大阪大107%など好調な志願状況です。また、東北大100%、名古屋大94%、神戸大99%、九州大101%となっており、受験人口減少下でも概ね昨年並みの志願状況です(東京工業大、大阪大は後期日程を実施していないため前期日程のみの数字)。名古屋大の減少は昨年高倍率だった一部の学部が受験生に敬遠された結果と見られます。
このように強気の出願の中にあっても受験生は、よく考えて行動しているようです。それは昨年の実質倍率が2.0倍を切っていた大学・学部等のほとんどで志願者数が大きく伸びていることからもうかがえます。それに加えて、共通テストの平均点が下がったことの影響も一部に見られます。例えば、合否判定における共通テストの数学の配点が低い山梨大医学部、滋賀医科大や共通テストの配点が二次試験よりも低い奈良県立医科大などは志願者数が大きく伸びています。
なお、中期日程が全体で前年比108%と伸びているのは、大阪市立大と大阪府立大を統合した大阪公立大・工学部の志願状況が大きく影響しています。大阪公立大は前期日程、後期日程の志願者数は昨年よりも減少していますが、中期日程は前年比133%となっています。恐らく近畿地区以外からも相当数の出願があったと見られます。また、前橋工科大、三条市立大のように新たに中期日程で二次試験を実施する公立大学も増えています。中期日程は前期日程と併願ができるため、受験機会が増えることは受験生にとって大きなメリットです。
私立大学は昨年の反動もあり、早慶など難関大の志願者数が増加
私立大は、早慶を始めとする難関大の志願者数が増加しています。青山学院大、明治大、法政大、同志社大、立命館大、関西学院大なども志願者数が増えています。昨年は多くの大学で志願者数が減少し、倍率も低下したため、その反動もあったと考えられます。ただし、ここでも共通テストの平均点ダウンの影響が見られます。難関大で共通テストを利用した方式で、出願締切日が共通テストの自己採点後に設定されている方式は志願者数が減少している大学が多く見られます。思うように共通テストで得点できなかった受験生が出願を見合わせたものと考えられます。
このほか、近畿大は情報学部の新設、理工学部エネルギー物質学科の新設などもあり大幅に志願者数が伸びています。名城大も情報工学部を新設するなどで志願者数が増えています。人気のある情報系学部ですので志願者が集まるのは必至です。また、千葉工業大、大阪経済法科大は入試制度の改革などによって志願者数が増加しています。大阪経済法科大の共通テスト利用方式の志願者数は昨年の5倍以上となりました。
こうした一方で、伝統のある中堅の女子大で全国的に志願者数の減少が見られます。文・人文系学部の定員が多いことや近年、生活科学系の志願者数が伸びていないことの影響もあると考えられます。ただ、こうした女子大は総合型選抜や学校推薦型選抜による入学者の割合が高いため、多くの受験生がすでにこれらの年内入試で受験を終えており一般選抜を、受験していないという可能性もあります。
今後は追加合格を含めた、合格者総数がどうなるかに関心が集まりますが、国公立大、私立大ともに新設大学、新設学部もあるため、合格者総数は増え、倍率は緩和の方向に進むことが予想されます。チャレンジ志向の受験生にとって順風と言えます。
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