ウェブサイトで流山ラグビークラブに関する記事を出すとき、神田教授は記事をチェックして、その記事の事実関係の間違いを学生にフィードバックする。

 「間違いを指摘されるのは、学生にとってものすごいストレスだと思いますが、軌道修正は大事なことです。書けなかった失敗や世の中に出なかった失敗はいい。でも、書いて出てしまった失敗には、絶対に書かれて影響を受けた人がいるわけです。もし、事実と違う記事がそのままウェブサイトに載ってしまったらどうなるのか?独善的にならずにそういう感覚を常に持って取り組んでもらいたいと思っています」

 世の中には、伝えていかなければいけないことがある。そのことで、誰かを傷つけるかもしれない。しかし、一方でその言葉によって救われる人がいるのもジャーナリズムの事実。だからこそ、そのプロセスが一番大事なのだ。ジャーナリズムにおける公正とは両方の意見のバランスを取ることではなく、公正な手法でつくられた記事、公正な手法でつくられた映像、つまり公正な取材をしたかどうか、そこに尽きる。そして、それを常に振り返ることが大切だと神田教授は話す。

 「手法は振り返ることができるものですから、学生には、常のそのことを意識して実践して欲しいですね。大学として学生を送り出す以上、最低限、現在のメディアの仕組みやその知識の修得に加えて、『直当たり』『言質を取る』など、記事を書くにあたってジャーナリズムの基本となる取材の手法や作法が何であるかは理解している学生を送り出したいと思っています。

 新聞社やテレビ局などのマスメディアが『公正』『中立』『正義』といった理念を掲げていますが、理念は、決してジャーナリズムか否かを決める定義にはなり得ません。公正な手法でつくられたものだけがジャーナリズムというだけの話です。学生時代に繰り返し説かれたメディアリテラシーや公正さの話が、学生の心のどこかに残り『ジャーナリズムとは何か』を問い続けられる社会人になって欲しいと思っています」

 

 

 この夏、神田ゼミの3年生は、8月8日~14日に開催された『高円宮賜杯 全日本学童軟式野球大会 マクドナルド・トーナメント』の全国大会を取材した。記事や撮影写真は情報サイトOVO(オーヴォ)に掲載、Yahoo!ニュースなどをはじめとする多くのネットメディアでも配信された。『スポエド』の取材・制作とは違って、取材から執筆、アウトプットまで常にスピード感が求められる現場での緊張感が、学生をさらに成長させたに違いない。

 新聞をつくったり、広報的な役割を担ったり、大会の取材記事をアップしたりと、直に現場に行って経験することが、マス・コミュニケーション学科が掲げる「正確にとらえ、的確に伝える」ことにもつながっていく。特に学生時代に取り組む「モノづくり」は、努力する機会を与えてくれる。見えないゴールに向かって努力を続けることは普通の人にはなかなか難しいものだ。

 新聞制作などのような「モノづくり」は、ゴールが見える分、努力がしやすく、学生も多少厳しいこと言われたり、やり直しをさせられたりしても、ゴールに向かっている実感があるから頑張れる。ゴールが見える学習、それが実践教育の魅力の一つでもある。

 神田教授は、スポーツを通した教育、そして学生について以下のように話した。
「スポーツは学生にとっては、とっつきやすい対象だと思います。だから、スポーツを通して、楽しいことも厳しいことも勉強して欲しい。スポーツを軸に考えることで、歴史や社会学的なこともわかり、他にも面白いことがすごくたくさんある。

 活字離れといわれる今の学生も、子どもの頃から毎日のようにSNSでは何らかの文章を書いて人に送ったり、もらったりしています。その環境だからこそ培われた文章のセンスが絶対にあって、SNS世代の彼らにしかないできない、面白いものをつくっていってもらいたい。そして私自身は、その土台を提供しながら、彼らの可能性を見出していきたいと思っています」

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江戸川大学

普遍的な教養と、時代が求める専門性を身につけ、将来は幅広い分野で活躍

創立以来、国際教育と情報教育に力を注ぎつつ、専門の社会学・心理学・教育学などを中心に発展してきました。高い専門性で対応できる能力や豊かな人間性で、社会に貢献できるグローバルな人材の育成を目指しています。[…]

大学ジャーナルオンライン編集部

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