1902年創立の京都女子手藝学校を礎とする京都橘大学。幾度もの改革を経て、現在は文理医療分野を擁する9学部15学科の総合大学となった。さらに、2024年には情報学研究科(仮称※1 )、2026年には工学部にデジタルメディア学科、ロボティクス学科、健康科学部に臨床工学科を設置する予定(仮称※2)。AI時代の今、デジタルネイティブ世代の感性を活かして多様な挑戦ができるよう、情報学を軸にした教育を推進している。
クリエイティブな発想を育てる、
京都橘大学ならではの情報工学科のポリシー
「一部のトップ研究者ではなく、AIやビッグデータ、 IoTなど第4次産業革命の担い手として、日本の情報技術の要となる人材を育成したい。『工学部情報工学科』というトラディショナルな学科名には、そんな気持ちを込めています」
情報学を強化すべく、2021年4月に工学部情報工学科と建築デザイン学科の2学科を置いた京都橘大学。その情報工学科で教鞭を執る東野教授は語る。
IT技術はもちろんChatGPTのようなAI(人工知能)も身近になり、社会では先端IT人材の育成が急務だ。そこで同大学の情報工学科では、カリキュラムを情報学系の学会が提唱する標準的な内容を軸に構成。2年次までにプログラミング、情報セキュリティ、コンピュータシステム、情報数学ネットワークの基礎など土台づくりに必須な知識や技術を学ぶ。特筆すべきは、ELSI (Ethical,Legal and Social issues、倫理・法律・社会課題)やリテラシー教育も併せて行う点だ。ChatGPTなどの新技術は社会を豊かにするが、使い方を誤ればトラブルにつながる可能性もある。
「AIがいくら発展しようと、『問い』を立てるのは人。AIをツールとして使いこなし、クリエイティブな発想を広げられる力や知識をつけることが大切です」
文理横断の「総合知」と
好奇心を伸ばす多彩なプロジェクト
3年次以降は、ソフトウェアデザイン/ネットワークデザイン/IoTシステム/メディアデザイン/データサイエンスと5コースを用意し、各自の興味関心に沿って専門性を高めることができる。とはいえ、変化の早い情報分野では注目の技術や関心が一年で変わる想定もあるため、学生が柔軟にコース選択できるような仕組みだ。さらに、希望が明確な学生はもちろん選択肢に迷う学生には、関心や将来を踏まえたコース選択をできるよう担当教員がサポートする。
学部横断という面では、経済学部や経営学部と行う産学連携の「プロジェクトマネジメント」や「クロスオーバー型課題解決プロジェクト」にも注目したい。
「3学部の学生が課題についてディスカッションし解決策を考えるPBL(Project Based Learning)型科目です。技術力で問題を解決しようとしがちな工学部の学生と、社会・経済的な視点で対峙することが多い経済学部や経営学部の学生が組むことで議論が立体的になるのです。企業のご協力をいただいているので、課題の内容も非常に実践的ですよ」
2年次には、企業から講師を招き、実社会で情報学がどう活用されているかを事例とともに学ぶ。電機メーカーによるITを活用したスポーツ選手支援プロジェクトの紹介や若手エンジニアが業務について本音で語るなど、内容は幅広い。
「授業1コマ(100分)の半分は講師への質問やディスカッションに充てます。社会課題を解消する複雑なシステムの構築には、医療や介護、建築、土木、金融、行政など多様な分野に導入されたデジタル技術を、広くマネジメントできる力が必要です。自由な意見交換で世界を拡げ、マネジメントの素養も身につける。そのトレーニングの場と考えています」
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