社会のデジタル化が急速に進む現在、その担い手であるIT人材の育成は大学の急務と言える。特にその最重要領域となる「数理・データサイエンス・AI(人工知能)」では、知識の応用力も必要だ。富山県立大学ではこの分野を専門とする情報工学部を2024年に開設する。

 

画像:『人工知能モデルの設計』
大量の実験データからタンパク質の性質解明のための人工知能モデルを構築しようと試みています。

新設のデータサイエンス学科に
既存学科を再編した学科体制

2024年、情報工学部の新設により、工学部や看護学部とともに3学部体制となる富山県立大学。科学技術の振興と地域産業発展への寄与を目的に創設された短大を母体とし社会の要請を汲みながら教育・研究体制を長年整備してきた。2019年には看護学部、2022年4月にはDX教育研究センター、そして情報工学部の開設へ。データサイエンス学科を新設し、現在は工学部にある知能ロボット工学科と情報システム工学科を再編する予定だ。

「この背景には、世界的なIT人材の不足があります。文科省の『数理・データサイエンス・AI教育プログラム』推進や富山県有識者会議での人材育成に関する答申も出ています。ビッグデータを活用して成長を続けるGAFA(※)の状況を見ても、データサイエンスの重要性は今後一層高まるでしょう。一方で日本でのデータ利活用はこれからであるだけに、来るべき時に活躍できる人材を育てたいと考えています」
情報工学部長予定者の髙木昇教授は語る。

基盤となる理論と実業向けの
思考法を組み合わせた教育

データサイエンスの数理から応用までを幅広く学びエキスパートを目指すデータサイエンス学科、多様な時空間データを扱い革新的な情報システムを研究する情報システムエ学科、そして、情報や機械、電子の工学分野に立脚するロボット工学やデータサイエンスの基礎を学ぶ知能ロボット工学科。学科ごとに明確な特徴はある一方、ビッグデータの利活用など相互関連する知識もある。だからこそ共通するカリキュラムも多い。

「たとえば、データサイエンスの専門科目は全学科の共通科目です。本学ではデータサイエンスを文理融合科目と捉えず、あくまで理系に軸足を置いて数理的理論を重視しながらリテラシー教育を行うのが特徴です。また、一般社団法人富山県機電工業会の会員企業の技術者にオムニバス形式で講義いただく計画やデザイン思考を重視した科目もあります」
『コミュニケーションを図りながら潜在的な課題を発見し、解決できる人材が欲しい』という企業の声を活かした科目でもあり、学生にとって未来の大きな力となりそうだ。

髙木教授は、オープンデータやAIサービスなどの拡大で独学用プログラムが広がる今だからこそ、大学でしか学べない必要な知識があると改めて語る。
「AIツールはデータを入れれば一応の答えは出ますが、それが妥当か、そうなった理由が何かと考察できる人材を育てたいのです。たとえば、論文の査読中に統計の適用の誤りがあったとして、そこに気づくためには基盤である理論の知識が必要ですよね。それが、本学部で数理に力を入れる意味です」

大学共通の方針である少人数教育の実践により、4年間の担任制を敷くことで勉強以外の相談もできるようにする。教養教育やキャリア教育の面でも、センターの設置や専任の教職員の配備によって学生が多様な情報に触れる機会を提供し、相談しやすい環境を整える。

 

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富山県立大学

柔軟で豊かな人間性を備えた、工学・情報工学と看護学のプロフェッショナルを育成

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大学ジャーナルオンライン編集部

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