関西大学では、オンラインの学習支援システム「関大LMS」を活用したキャリア教育を強化している。23年4月から始まった「キャリア形成科目群」は、既存の専門教育と1年次から両立して進めていくことで、学生一人ひとりの人生の選択肢を広げていく。

 

社会で活躍する先輩たちの動画をはじめ、就職活動やキャリア形成に役立つコンテンツが満載された「関大版 ハタチのトビラ」

「キャリア形成科目群」を新設、大学での学びを未来につなげる

働き方も生き方も多様化する中,自分のキャリアは自分で形成していくことが求められる一方で、将来の自分のキャリアに対する不安を抱える大学生は非常に多い。こうした状況を踏まえ、関西大学では、今年度から全学の共通教養科目として「キャリア形成科目群」を新設した。1、2年次から共通教養科目の授業としてキャリア形成を専門的に学ぶことによって、学生が望む将来の仕事と大学での学びを結びつけていく試みだ。

新設するキャリア形成の授業は大きく3つに分かれる。① 基礎・理論を学ぶ「大学生から始めるキャリア形成」「現代社会を生き抜くためのキャリア形成」、② 課題解決型の実践力を身につける「キャリア形成入門演習」「キャリア形成実践演習」、③ 理論と実践をつなぐ思考力を育む「理論と実践から探究するキャリア形成」となっている。

共通教養科目として全学部の学生が受講可能であり、アクティブラーニングで実践的な課題解決に取り組む。ペアワークやグループワークなどを通じた学部間の交流も図られ、その後の大学生活や社会生活にも役立つチームビルディングのスキルの基本を習得し、関西大学のポリシーでもある「考動力」を育む。関西大学 副学長・人間健康学部の岡田忠克教授は「学生が望むキャリアと学部において学ぶ内容との間にズレが生じないよう、早期からきちんとしたキャリア思考を育むことは重要です。専門教育へのモチベーションも高まり、より確かな将来への道筋が描けます」と説明する。
「キャリア形成科目群」を軸にした4 年間のキャリア教育のイメージ

「関大LMS」のさらなる活用でキャリア教育を推進

関西大学では、さまざまなシステムで学生支援をする。学習支援システム「関大LMS(Learning Management System)」では、自由な学習環境を構築するためにオンライン化の整備に取り組んできた。動画配信ソフトとの連携によるオンライン学習時の画面集約や解説の自動字幕化、履修成績などの総合管理、また様々なメディアへのアクセスと情報収集や共有を効率化するなど、その活用は多岐にわたる。

さらに今回、有効な学習データを蓄積できるLMSを「キャリア教育」に活用する。学部や研究科、キャリアセンターなど各部署が蓄積してきた入学時からのデータを一元化し、学生一人ひとりに最適化されたキャリア形成へとつなげていく。

岡田教授は、「3年次から急に就職活動に取り組むのではなく、入学時から10年、20年先の人生を見据えて学びを深めることが大切だと考えています。LMSの導入・整備によって、早期からより充実したキャリア教育を実践することが可能になりました」と話す。

1、2年次から将来を考える学生が増加

「社会の第一線で活躍している先輩たちの様子を動画で見たり、聞いたりすることで、早い段階から将来の進路や、そのために必要な学問分野に関心を持つ学生が増えました」と、岡田教授はその成果を語る。LMSを活用し、1、2年次生限定のキャリア支援WEBツール「関大版ハタチのトビラ」を2022年に開設。先輩や教員、企業の採用担当者からの就職活動に関する情報や、社会人の1日に密着した動画などが視聴できるほか、自分の興味を入力して自己理解を深めるワークシート、受講者同士の学びをシェアする機能など、学生の将来の選択肢を広げるコンテンツが充実している。

さらに、今年度から先駆的な試みとして、学生が社会人の1日に密着して仕事を体験する「産学連携型ジョブシャドウイングプログラム」の動画も公開。第1回目はPanasonic Groupの全面協力のもと、人事・営業・技術系の3名の社員の1日にそれぞれ学生が密着して仕事を体験した。インターンシップや就活前の学生も、この動画を見ることで具体的に社会で働くイメージを持ちやすい。

「関大版ハタチのトビラ」では、個々の学生の興味関心に合わせたキャリア情報を発信するとともに、「大学1、2年次生の今、何をやるべきか」「日々の学問は、将来どのようにつながるのか」など、将来のキャリア形成や就職活動の準備に向け悩む学生をきめ細やかにサポートする。

その他にも、同大学独自のキャリア支援システム「KICSS」内には、「キャリア支援専用ポートフォリオ」が設けられており、学生は自身のレポートや試験、各種活動の結果・成果をまとめて記録・保管できるため、就職活動における自己分析や適性判断などの際に役立っている。

今後の構想は、卒業生の5年後、10年後のキャリアを追いかけ、そのデータを蓄積することで、同じ道を目指す後輩への指導にも生かしたいと岡田教授は言う。

「これから本学を受験する皆さんには、自分の可能性に限界を設けることなく、希望を持って大学で学んでほしいと思っています。本学ではキャリア教育として1年次から多様な機会を提供していますので、自身のキャリアについて考えを深めることで専門教育での学びも充実し、人生の選択肢を広げていけると思います」と、話した。

 

関西大学 副学長・人間健康学部
岡田忠克教授

 

関西大学

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