大学側の視点ではなく、常に高校生の目線で

 一瞬、市販の女性誌と見間違える戸板女子短期大学のパンフレットは、高校生が読む雑誌のような作りになっている。表紙のモデルは学生、中面も他の大学案内と比べて、1冊200名以上の学生が掲載されているなど、読み物としてもまさに女性誌に近い。このような大学案内を作るにあたっても、コンセプトやデザインの方向性、写真のセレクトなどは、制作会社まかせにせず、広報の担当者が一つずつこだわって決めていく。なぜなら、戸板女子短期大学のブランディング全体を取りまとめていくことが広報の役割であり、それを様々な意見を取り込んでしまって、「アイディアの均質化」というリスクを回避する必要があるからだ。

 例えば、ありがちな「パンフレット全体に統一感を出したくなること」はよくないことだと言う。戸板女子短期大学の場合は、学科や学生、学びの個性がバラバラであることが、強みでもあるので、ページの作りやデザインも学科ごとにまったく違うようにしている。個性があることが「コンセプト」だからこそ、この点をブレないように進めて行くことは案外難しい。人は安定したものへと流れるものであり、どうしても、同じ学校であれば統一感を出したくなってくるからだ。そして、あたりさわりのない「均質的な」内容になっていくことは、他の大学や専門学校との差別化、魅力を際立たせることから遠ざかることになる。

学生を巻き込み、学生自体が「媒体化」していく

 日常、スマートフォンでのコミュニケーションが欠かすことができない高校生に向けて、ホームページやSNSでの発信の手法についても、他の大学や専門学校からの問い合わせが多いと言う。

 「広報が率先してSNSで発信するのではなく、学生自身がSNSで自分の大学のプロジェクトを自慢したくなるような仕掛け、学生がイキイキと活躍できる場=映えるシーンを意図的に用意することが重要です。それが、戸板女子短期大学では年3回開催される学祭であったり、ダンス同好会や部活動、課外活動であったり、企業コラボであったりするわけです。
その中でも、戸板女子短期大学の一番の魅力といえるのが、オープンキャンパスの学生スタッフ『Teamといたん』です。」

 現在『Teamといたん』は、「感動を与える日本一のオープンキャンパス」という目標を掲げて活動をしている。自分たちで目標を設定したことで、学生は学校の代表として、ひとつ一つの行動や言動を日本一に適したものかと、不思議と律して振舞うようになったそうだ。

 「彼女たちは、高校生や保護者、高校の先生に対して、戸板女子短期大学のプレスや企画者の役割であり、オープンキャンパスや体験の企画、プレゼンテーションなど、学生が主体となって運営しています。戸板女子短期大学のオープンキャンパスに訪れると、その行動力や姿勢、ホスピタリティに憧れて、戸板女子短期大学への入学を希望する高校生も多いです。

 正直申し上げて、戸板女子短期大学は定員400名の小規模短大。四年制大学志向の現在において、私たちの学校に対する保護者や高校の先生方の第一印象や知名度は、ほとんど知られていない、といった方がいいかもしれません。ただ、上記に挙げたマーケティング施策から、オープンキャンパスに来てくれた高校生が「短大にいきたい。戸板に行きたい」と保護者や先生方に言ってくれることで実際にオープンキャンパスに来校され、そこで想像を超えてイキイキと活動する戸板女子短期大学の学生をみて、短大でこんなに活気がある学校があるのかと驚かれます。

 保護者にとっては我が子の、高校の先生とっては教え子の、1年後、2年後の姿が彼女たちですから。母校の先生に学生が会いに行ったりすると、やはり教え子の成長に驚かれる先生も多いようです。今ではチームといたんだけでなく、他の学生にもその効果は広がっています。」

 『Teamといたん』で培ったオープンキャンパスの運営ノウハウを学生募集に苦戦する高校でのオープンスクール研修に協力をしていく。戸板女子短期大学の最大の武器である「学生育成」で高校との連携を進めていく新しい形だ。すでに数校での実施も決まっている。

多彩なコンテンツが就職力を磨き早く社会で活躍する

 また戸板女子短期大学では、就職率についても99%(2023年度)という高い実績を出している。就職先も大手食品メーカーやIT、エアライン、ホテルなどの人気の企業が並ぶ。学生は、企業コラボへの取り組みや学祭、部活動のほか、授業で鍛えられたプレゼンテーション力などで自信をつけ、希望する企業への就職を果たしている。それは上位の四年制大学と比べても引けを取らない。

 「もちろん、私たちの規模だからできることではありますが、学生がイキイキと活躍できる場をつくり、そしてそれを正しくセレクトして伝えていく仕掛けをつくることが、大学広報の役割だと思っています。

 表面的にパンフの見栄えをよくしただけ、記事を出しただけでは効果は続いていきません。その場に参加する学生がその経験を入学前からイメージし、現場や成長を楽しみ、俯瞰的に見ることで広報につながる。そうなると、広報が一つ一つに手をかけずともナラティブ的にストーリーとして自然とうまく回り出します。そうなると、私たちは広報として、新しいメディアやマーケティング手法に向けてチャレンジすることができるようになります」

成功のカギは学生が踊る舞台:戸板女子短期大学が示す女子大、短大の未来

 戸板女子短期大学では、多様な「場=舞台」を用意することで、社会人として必要なコミュニケーション力や、マナー、取り組む力、推進力など学生たちの様々な力を磨くと同時に彼女たちの新たな可能性を引き出し、求められる人材として短大として2年間で社会へと送り出している。もちろん、学生がその舞台で「挑戦する=踊る」風土を作り上げるのには、長い時間と労力、そして教職員の一体感や学内での同一指針が必要だと言う。

 戸板女子短期大学には、もちろんまだまだ改善すべき余地もあり、学校規模によって向き不向きもあるだろう。しかし学校経営という観点からみて、戸板女子短期大学の成功は、冒頭に述べた「女子大」「短大」苦境の中で、非常に示唆の多い参考にすべきブランディング事例であることは間違いない。

 是非、一度オープンキャンパスや学祭など、学生と直接対面するイベントで戸板女子短期大学に訪れ「こんなに元気で活動的な短大があるのか」「この短大ならは自分の娘に入学してほしい」と女子大生たちがイキイキと動く姿をその目で確かめてみることを薦めたい。

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戸板女子短期大学

大学ジャーナルオンライン編集部

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