自動運転の研究や教育に力を入れてきた埼玉工業大学。2025年4月からは工学部情報システム学科に国内初の「自動運転専攻」が新設され、社会実装に向けた取組を加速させていく。

 また、大手企業への就職に強いことでも知られており、埼玉県内の大学で唯一「2024年有名企業400社実就職率ランキング」の100位以内にランクインしている。自動運転の教育・研究を経験する、渡部大志教授の工学部情報システム学科自動運転AI研究室からも、ホンダ、京セラ、キヤノンといった日本を代表する大手製造メーカーやIT企業に就職が決まった卒業生がいる。

 新専攻で期待できる学びや成長、そして将来の進路について、自動運転AI研究室で学んだ卒業生たちに伺った。

 

渡部大志教授(前列中央)と、取材日に卒業を迎えた自動運転AI研究室のみなさん

埼玉工業大学を選んだ理由は?

 埼玉工業大学では自動運転関連企業や深谷市などの自治体と協力し、自動運転車の開発と実証実験を続けてきた。自動運転AIスクールバスの運行、深谷市コミュニティバス「くるリン」への自動運転バス導入をめざした研究・開発など、実用化をめざした取組が多数。学生にも「自動運転といえば埼玉工業大学」というイメージが浸透しているようだ。

「埼玉工業大学は自動運転バスの実証実験走行距離が日本でいちばん長いと知り、入学を決めました。」(小谷さん)

「プログラミングを始めた頃から物事の自動化に興味がありました。実際に自動運転で車を動かしている渡部先生の研究室に魅力を感じたのも、入学理由のひとつです。」(後閑さん)

 渡部先生の自動運転AI研究室では、開発した技術を実際の車両に取り付けて走行したり、コンピュータシミュレーションを使って課題を解決したりとさまざまな卒業研究ができる。なかには特許出願につながる成果を出す学生もいるそうだ。卒業生たちの研究事例をいくつか紹介しよう。

 榎戸さんは自動運転の車両に搭載される「LiDAR(ライダー)」というセンサーに注目。夏場の過酷な暑さを乗り切るための方法を考えた。

「ライダーは発熱すると誤動作を起こし正確なデータが出なくなります。これを解決しようと提案したのが、水冷式クーラーでの冷却です。また、水冷式クーラーは水漏れを起こすことがあるので、その対策も研究しました。」(榎戸さん)

 久冨さんは自動運転と、自身が好きな鉄道を組み合わせた研究に取り組んだ。

「画像AIを使い、踏切の標識を読み取ったり、遮断機の状態を認識したりするシステムを作りました。車で踏切を渡る場面もあるので、安全に走行するために欠かせない研究です。」(久冨さん)

インターンシップのような経験も

 冒頭でも紹介したとおり、卒業生のなかには大手製造メーカーやIT企業に就職する人が多数。ほかにも医療IT、鉄道など、車以外の業界でエンジニアとして就職する人や、ベンチャー事業を立ち上げた卒業生もいる。卒業研究が本格的にスタートする前に就職活動をしなければならなかったものの、同研究室の先輩の取組や先進的な自動運転への関心が影響を与えたことが就職実績を高めたそうだ。

「先輩方から世界初の水陸両用自動運転バスの話を伺い、それを踏まえて自分がやりたいことなどを面接で話しました。研究テーマに対して社員のみなさんから興味を持っていただけたことも、就職につながったと思います。」(小谷さん)

「自動運転をよく見ると、小さな部品やパーツなどがたくさん集まって大きなものを成り立たせているのだとわかります。だからこそ小さいものを作る現場にも携わりたいと思い、電子部品メーカーに就職しました。」(大草さん)

 卒業後も研究室での経験が活かせそうだと、学生たちは期待を寄せる。

「取引先と共同研究する機会もあるかと思うので、研究室での経験や関連分野の知識を活かしたいです。内容によっては、また渡部先生とご一緒できる機会があるかもしれません。」(今泉さん)

「この研究室は企業や自治体と連携して共同で実証実験をしており、学生のうちに大きな会社の方と交流できました。この経験は就職後も活かせると思います。」(金子さん)

「さまざまな会社と深く関わりながら研究ができるので、学内にいながらインターンシップをしているような濃い貴重な経験ができます。」(渡部先生)

自動運転で地域貢献

 地域に貢献できる自動運転技術をめざし、学生たちとともに研究を進めている渡部先生。新専攻でも刺激になる仲間との出会いや、技術開発の醍醐味が待っていると語った。

「ものづくりやAIなどさまざまな切り口で自動運転を学ぶことができる専攻です。志をともにする友達や企業の方々との出会いも刺激になるでしょう。社会に関わる機会が多い研究ですので、大学という環境を上手に使って将来につなげていただければと思います。
 また、コンピュータの中で動くものと、実際に自動運転車両を動かした場合は、その間にはギャップが生じるものです。ギャップを埋めていくのは大変ではありますが、同時にその課題解決に楽しさも感じられると思います。」(渡部先生)

地元・深谷市のコミュニティバス路線で、埼玉工業大学開発の自動運転車両が導入されることに

 最後に卒業生に新専攻の魅力と、入学志望者へのメッセージを聞いてみた。

「日本トップクラスの実証実験にも携われますし、自動運転を学びたい人にとっては天国のような場所です。まだ自動運転の知識がない方でも、興味さえあれば入学後に学びを深められます。」(伊東さん)

「自動運転バスなど、研究室で携わったものが社会に実装されて実際に乗客を乗せて公道を走り、多くの方に乗っていただける。こんな経験が学生のうちにできる大学は、なかなかないと思います。」(金子さん)

「自動運転技術はこれから急激に広がっていくので、大学生のうちから力を付けておけば大きなアドバンテージになるはずです。」(須田さん)

 自動運転の実用化には、まだ解決しなければならない課題が山ほどある。そして自動運転技術者のニーズが高まっている。工学部情報システム学科の自動運転専攻で学び、最先端の自動運転の分野に携わってみてはいかがだろうか。

大学ジャーナルオンライン編集部

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