人体通信とは、人体を媒体とする通信技術を言い、ウェアラブル機器への応用が期待されている。
これまでは、スマートウォッチなど主に腕に装着するデバイスへの応用が検討されてきたというが、今回、東京理科大学と東京大学のグループは、人体通信の有望な応用先となる、補聴器のような両耳に装着する左右分離型デバイスを想定し、こうしたデバイスにおける人体通信メカニズムとその特性を検証した。

 詳細な数値人体モデルを用いて電磁界解析を行った結果、両耳に装着したデバイス間の通信には、現行の補聴器で使われている2.45GHzの電磁波による通信よりも、10MHzの人体通信の方が適していることがわかった。20MHz、30MHzの人体通信を行った場合のシミュレーションでも、電場分布や伝送特性に大きな違いはなく、いずれも人体通信に適した周波数であることが確認された。

 また、デバイスの電極構造が人体通信の伝送メカニズムと通信特性に大きな影響を与えること、インピーダンスのマッチングで通信特性を向上できることなどがわかったほか、今回提案したシステムは、電力消費と人体への安全性という点において十分実用化に耐えうるレベルをクリアしていることも確認された。

 脳などの重要な器官が集中する頭部への人体通信の利用はこれまで十分に検討されてこなかったが、人体通信は秘匿性に優れ、電磁雑音を発生せず、かつ低消費電力で通信できる可能性があるという利点がある。本研究により、人体通信の応用範囲が広がり、補聴器だけではなくワイヤレスイヤホンなど頭部に装着するウェアラブル機器を対象とした人体通信システムの普及が加速することが期待される。

論文情報:【Electronics】Transmission Analysis in Human Body Communication for Head-Mounted Wearable Devices

東京大学

明治10年設立。日本で最も長い歴史を持ち、日本の知の最先端を担う大学

東京大学は東京開成学校と東京医学校が1877(明治10)年に統合されて設立されました。設立以来、日本を代表する大学、東西文化融合の学術の拠点として、世界の中で独自の形で教育、研究を発展させてきました。その結果、多岐にわたる分野で多くの人材を輩出し、多くの研究成[…]

東京理科大学

真の実力を養う実力主義。科学技術の創造による持続可能な世界の実現をめざして

東京理科大学は、1881年に「東京物理学講習所」として創立され、140年以上の歴史を経て、4キャンパス7学部33学科、7研究科30専攻を擁する、理工系総合大学に発展。「理学の普及を以て国運発展の基礎とする」という建学の精神と、真に実力を身につけた学生を卒業させ[…]

大学ジャーナルオンライン編集部

大学ジャーナルオンライン編集部です。
大学や教育に対する知見・関心の高い編集スタッフにより記事執筆しています。