名古屋大学の研究グループは、私たちの身の回りに豊富に存在するカルボン酸を高効率でアルコールに変換する(水素化する)触媒を開発した。既存の低原子価金属触媒では、水素化能力が高いゆえに目的と異なる反応までもが起こりやすく、使用できるカルボン酸の種類が限られるなど課題があった。そこで、本研究グループは、水素化能力の低い高原子価金属の水素化触媒としての可能性を調べ、その結果、レニウム触媒が優れた能力を持つことを見出した。

 私たちの生活を支える石油化学工業で大量に生産されるだけでなく、生物由来のバイオマス資源としても天然に豊富なカルボン酸。近年、このカルボン酸を、燃料や医薬品など多くの用途に利用できるアルコールに変換し有効利用することが期待されている。カルボン酸をアルコールに変換する「水素化」は、水のみを廃棄物とするクリーンな反応だ。

 非常に安定なため化学変換が困難なことが知られているカルボン酸の水素化で、今回開発したレニウム触媒を用いると、高収率で目的のアルコールが得られた。それだけでなく、従来の触媒がうまく機能しなかったさまざまな官能基を含むカルボン酸の水素化にも有効であることがわかり、使用できるカルボン酸の種類が大幅に増えた。
また、レニウム触媒を用いてカルボン酸を酸無水物と反応させることで新たな炭素鎖を結合させ、炭素数を増やしたアルコールに変換できることも見出した。この反応は従来の低原子価触媒では知られておらず、多様な炭素骨格を持つアルコールの合成が新たに可能となった。

 本成果が持続可能な炭素循環型社会の実現に寄与することが期待される。

論文情報:【Scientific Reports】Catalytic transformation of functionalized carboxylic acids using multifunctional rhenium complexes

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